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ベテランの技 若手に(1)

求められる教師像

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千葉市教育センターの神尾祝子、青木一、塚原久江、長瀬秀二の4指導主事(左から) 千葉市教育センターは、千葉市教委の機関で、教育研究、教職員研修、教育相談、情報教育、教育広報を担う。研究部門では今年度、県内外の「授業の達人」から聞き取り調査を行い、その行動特性を分析している。各都道府県や政令市にも同様の組織がある

 教師に求められる資質・能力とは何か。いつの時代にも問われ続けてきた古くて、そして新しい課題です。

 さかのぼってみると、ジャン・ジャック・ルソー(1712〜78)が、架空の生徒「エミール」の成長を通して教師力を説いたのが1762年。今から約250年前のことです。

 日本では、1873年(明治6年)に師範学校から出された「小学教師心得」があります。第1条には「凡教師タル者ハ学文算筆ヲ教フルノミニ非ズ父兄ノ教訓ヲ助ケテ飲食起居ニ至ル迄心ヲ用イテ教導スベシ故ニ生徒ノ中学術進歩セズ或ハ平日不行状ノ徒アラバ教師タル者ノ越度タル可シ」と記述されており、授業力の向上のみならず、生き方指導にも尽力することを明記しています。

 近年では、1971年(昭和46年)に中央教育審議会(中教審)答申が「今後における学校教育の総合的な拡充整備のための基本的施策について」の「教員の養成確保とその地位の向上のための施策」の中で、「教職は、本来極めて高い専門性を必要とするものであり、教育者としての基本的な資質の上に、教育の理念及び人間の成長と発達について深い理解、教科の内容などに関する専門的な学識、さらにそれらを教育効果として結実させる実践的な指導能力など、高度の資質と総合的能力が要求させる。そのような資質と能力は、その養成、採用、研修、再教育の過程を通じてしだいに形成されるべきだろう」と指摘しています。

 それを受け、翌72年、教育養成審議会(教養審)建議では、教員としての体験や研修の過程を通じて形成され向上が図られていくものであるとし、改善方策を提言しました。

 今日求められている教師の資質・能力の源流は、臨時教育審議会答申(1985〜87)の「教育改革に関する第1次〜第3次答申」に見ることができます。「人間愛や児童生徒に対する教育的愛情を基礎とする広く豊かな教養、教育の理念や人間の成長・発達について深い理解、教科等に関する専門的知識、そしてそれらの上に立つ実践的指導力に児童生徒との心の触れ合い」をいつの時代にも教師に望まれる資質・能力ととらえたのです。

 その後この考え方は97年(平成9年)の教養審第1次答申の「新たな時代に向けた教員養成の改善方策について」に受け継がれていきます。「教員に求められる資質能力とは何か」について、「いつの時代にも変わらないものもあるし、そのときどきの社会の状況により特に重視させるものもある」とし、いつの時代にも求められる資質能力と、今後特に教員に求められる具体的資質能力の二つに分け提言しました。

 2005年(平成17年)10月の中教審答申「新しい時代の義務教育を創造する」では、教師の資質向上が重要であると指摘し、優れた教師の条件として三つを挙げています。

 一つ目は「教職に対する強い情熱」。これは教師の仕事に対する使命感や誇り、子どもに対する愛情や責任感、常に学び続ける向上心などです。二つ目は「教育の専門家としての確かな力量」。これは子どもの理解力、児童生徒指導力、集団指導の力、学級づくりの力、学習指導・授業づくりの力、教材解釈の力などです。三つ目は「総合的な人間力」。これは豊かな人間性、社会性、常識と教養、礼儀作法をはじめ対人関係能力、コミュニケーション能力などの人格的資質、教職員全体と協力する力などです。

 この中教審答申の二つ目が今日における教師力の重視につながり、教育改革のかなめとされるようになったのです。この動きは教員免許の更新制、大学の教職課程の改善、教職大学院の創設とつながっています。

教員大量採用時代

 年齢別の教師層に大幅な変化が表れています。団塊の世代の世代交代が始まり、同時に若年層の教師が大量に採用されだしたのが原因です。2008年度の千葉県の年齢別教員数を見ると、すでに小学校では大量採用が始まり、20歳代若年層の教師が一集団を形成しています。中学校ではまだ微増にとどまっていますが、総数では小中ともに現在、圧倒的割合を占める50歳代のベテラン層が退職していくこの10年間には、さらに新規採用が進むことになり、学校全体の若年層教師の占める割合が相当高くなるのは確実です。

ノウハウ伝承の危機

 学校教育はこれまで、ベテラン教師による知恵と技によって平常が保たれてきたのに、30歳代半ばから40歳代前半の中堅教師層が極端に薄いため、十分な伝承ができていないのが現状です。

 細かいノウハウなどの教師文化の伝承は、教える方も教えられる方も1世代以内の違いならスムーズに行える傾向にあります。ベテラン層は中堅層への指導は気軽に出来るし、若年層は中堅層に気兼ねなく質問できる。20歳代教師からしてみれば、自分の近い存在、今にも手が届きそうな存在として30歳代教師が格好のモデルになるわけです。しかし、2世代違うとなめらかな接続が難しくなります。このため、中堅層教師の存在が重要となりますが、中堅層が薄いため、ベテラン教師と若年層教師の接続がうまく機能していません。

 中堅層は同年代の教師との交流や情報交換がなかなかできず、実践上の問題を抱えても相談相手が見つからず職場で孤立する傾向があります。校内では「若手」である状態が長く続き、年下の教員の面倒をみる経験にも乏しいのです。

2009年11月28日  読売新聞)
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