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    [大学への道]<1>18歳 学び成長する場を

     知的障害を持つ若者が、特別支援学校高等部を卒業後、自立のための勉強や職業訓練をする4年制の「カレッジ」が全国的に広がりを見せている。大学進学への道は厳しく、大学の代わりにと設置された学びの施設だ。知的障害を持つ若者の進学はどうなっているのか、現状について考える。

    ◆きっかけは親心

     「娘のことをちょっと話したいのですが。カレッジを作るきっかけになったのが、次女です」

     福岡市東区に2012年、「カレッジ福岡」を開設した社会福祉法人鞍手ゆたか福祉会理事長の長谷川正人さん(55)は、5月の説明会「オープンキャンパス」で、参加した保護者らに語り始めた。

     「カレッジ」は障害者総合支援法に基づく、障害福祉サービスの「自立訓練事業」と「就労移行支援事業」(各2年間)を組み合わせた4年制。同法人では「福祉型大学」と呼ぶが、大学ではない。

     長谷川さんの次女(24)は重度の知的障害で、特別支援学校高等部を卒業する時、長谷川さんは次女にもっと勉強を続けさせたいと考えていた。担任に「娘を留年させて」と頼んだが、だめだった。「18歳で卒業して、すぐに福祉事業所で働かせるのは、あまりにもせつなかった。もう勉強をするところがないのかと残念でした」と長谷川さん。結局、生活介護の事業所で働くようになった。

    ◆進学率1%未満

     九州・山口では、特別支援学校高等部を卒業した知的障害者が、大学や専門学校へ進学するのはほぼゼロ。卒業生のために高等部に「専攻科」(1年間以上)を設置できるが、知的障害者のための特別支援学校の専攻科は全国に九つだけ。九州・山口には、鹿児島県日置市の私立鹿児島城西高校に知的障害者の専攻科がある程度だ。高等部を卒業後は就職するか、障害福祉サービス施設で就労に向けた訓練などを受けるしかないのが現状だ。

     長谷川さんは、一般の高校生は約7割が大学などに進学するのに、高等部を卒業した知的障害者の進学率が1%にも満たないことについて、「大きな教育格差が生じている」と言う。「健常者の青年は大学などで、青春を謳歌おうかしながら成長する。知的障害の青年には、こうした成長の時間が与えられていないのはおかしい」と疑問を投げかける。

    ◆全国30か所以上に

     和歌山県内で01年頃から、「高等部で終わらせず、もっと学ばせたい」と考える保護者らが、専攻科設置の運動を始めた。専攻科を考える会の一つが行政に設置を働きかけたが、実現しなかった。そこで地元の福祉作業所にかけあい、自立訓練事業(2年間)を利用した「福祉型専攻科」を08年に全国で初めて実現させた。この後、こうした施設は「学びの作業所」と名付けられ全国に広がった。

     長谷川さんは各地の動きを参考に、「福祉型大学」として「カレッジ」を構想した。「次女がいなかったら、考えも及ばなかった」と話す。

     長谷川さんは15年までに、長崎県大村市、東京都新宿区、北九州市、福岡県久留米市に同様の「カレッジ」を次々に開設し、約120人が学んでいる。現在、「カレッジ」や「学びの作業所」などは全国で30か所以上に増えている。

    2016年07月05日 Copyright © The Yomiuri Shimbun