文字サイズ

    [廃校再生]<1>IT企業 本社は旧分校

    • 旧小林小学校・山の寺分校の教室では、IT企業の社員がパソコンに向かう(10日、長崎県南島原市で)
      旧小林小学校・山の寺分校の教室では、IT企業の社員がパソコンに向かう(10日、長崎県南島原市で)

     少子化や過疎化で学校の再編が進み、全国で毎年、500校前後の小中高校や特別支援学校が廃校になっている。7割が再利用されているが、活用策を見いだせず、地域の衰退を憂慮する自治体も少なくない。九州・山口の事例から、廃校再生のヒントを探る。

     5月上旬、雲仙・普賢岳の南麓に位置する長崎県南島原市深江町にある旧小林小学校・山の寺分校。一つしかない教室に入ると、5人の男女が、デスク上のパソコンに向かっていた。

     「どのレイアウトが最もアクセス数を増やせるかな」

     ここは、ホームページ制作や広告デザインを手掛けるIT企業「メディアリレーション」のオフィス。児童数の減少で、2004年に廃校となった分校に、4年前に進出した。延べ床面積約130平方メートルの平屋建て校舎をそのまま利用。職員室は休憩室に使う。

     分校は地域の宝だった。60年前、約3キロ離れた本校への通学が難しい1年生のために、地域の人が総出で傾斜約30度の林を整地し、開校にこぎ着けた“歴史”がある。多い年には18人が通ったが、閉校時は2人だけ。

     福岡から列車を乗り継いで3時間半、東京からだと飛行機と列車を使って5時間。同社社長の佐々木善浩さん(48)が、東京を出て南島原にオフィスを構えた理由は「多くの人とのつながりを持てた」からだった。

     優秀な人材を発掘しようと、「軽井沢や東北でも候補地を探した」(佐々木さん)末の結論だったという。視察に来る度、地元企業の経営者や農業者など、毎回違った人と引き合わせてくれる南島原市の熱意に、「必要とされていると思った」。進出に合わせ、光回線も整備された。

     島原半島の特産品をPRするサイト制作や、求人情報サイトを開設して広告収入を得るほかに、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の世界文化遺産登録をにらみ、訪日外国人向けの情報サイトを充実させ、観光客を呼び込もうとしている。目指すのは、地域との共存共栄。分校を本社として会社登記し、社員6人のうち3人を地元採用した。

     同社の誘致に市が支出したのは、分校のエアコン設置にかけた70万円だけ。家賃は月額8000円だ。南島原には来月、廃校となった小学校に別のIT企業も進出予定で、市の担当者は「地元には少ないIT企業を廃校に呼び込んで、地域を活性化できれば」と話す。

     文部科学省によると、全国で再活用中の廃校4198校のうち、オフィスなどに生まれ変わったのは1割(昨年5月)。同省はホームページで各地の廃校を紹介し、自治体と企業・団体とのマッチングを後押ししている。

    2017年05月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    スマートフォン版九州発