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    変わる小中一貫、「義務教育学校」九州に10校

     小中一貫教育を行う「義務教育学校」が各地で開校している。6歳から15歳の子どもたちが同じ環境で学び、教育課程も柔軟に組めるのが特徴だ。小中一貫教育を行う小中学校が増えたことを背景に、小学校6年、中学校3年という「6・3制」にこだわらない形態の新たな学校としてスタートして2年目。変わりつつある義務教育の今を探った。

    ◆1年から英語

     大分市中心部にある市立碩田せきでん学園は、大分県で初めての義務教育学校だ。旧市立碩田中と校区内の3小学校を統合し、4月に開校した。義務教育の9年間を前期、中期、後期に分けた「4・3・2制」を採用。児童生徒1036人が学ぶ。

     1~4年生は私服、5~9年生は制服だ。校舎2階の交流スペースでは昼休み、私服の児童と制服を着た生徒が一緒にくつろいでいた。「9年生が1年生をおんぶして遊ぶ姿を見かけることもあります」と佐藤修校長は話す。

     義務教育学校は、学校教育法の改正によって2015年に制度化された。背景には、小中一貫教育の広がりがある。中学進学時に環境の変化から学力低下や不登校などの問題が生じる「中1ギャップ」の緩和が主な目的とされ、2000年代以降に導入する自治体が増えた。

     ただ、これまでの「一貫校」は、同法上では小学校と中学校に分かれており、校長も教員組織も基本的には別々だ。このため、小・中に並ぶ新たな学校の種類として義務教育学校を加えた。1人の校長の下で9年間の教育を行い、教育課程も独自に設定できる。

     同校では1年生から英語の授業を行い、5、6年生になると理科や図工などは中学教員が教える。今月19日には、5~9年の学級代表が集まる児童生徒会の「リーダー研修会」が開かれた。

     佐藤校長は「低学年の児童には年の離れた先輩の存在が成長の機会にもなる。7~9年生では、低学年児がいることで中学生段階にありがちな強い上下関係が緩和され、トラブルが起きにくい」と話す。

    ◆過疎地導入多く

     義務教育学校は5月現在、全国で国公立のみ48校。東京都品川区では昨年度、小中一貫校6校をすべて移行した。区民は従来の小中学校と義務教育学校どちらも入学できる。担当者は「家庭の教育方針や子どもの希望によって選べるようにした」と話す。

     一方、過疎に悩む地方では、地域に学校を残すために小中を統合して乗り出すケースが多い。

     高知市の山間部にある「土佐山学舎」は15年に地元の小中学校を統合して一貫校としてスタートし、16年に移行。校区外からも通学できるようにして、英語教育やICT(情報通信技術)教育の充実などを打ち出したところ、児童生徒は統合前の2・5倍の141人に増えた。

    ◆様子見

     全国有数のツルの飛来地、鹿児島県出水市の市立鶴荘かくしょう学園は、隣り合った小中学校校舎を渡り廊下でつなぎ、今年度から移行。独自の教育科目として「ツル科」を設置し、ツルの生態を学ぶ。児童生徒は57人。市教委の担当者は「少子化の中、地域の拠点となる学校を魅力ある形で将来に残すことが大きな課題」と狙いを語る。

     ただ、市内ではほかに設置の予定はない。今回の法改正では、義務教育学校のほかに、小中を統合しなくても一貫教育を取り入れやすい仕組みが整備されたため、現場ではまだ「様子見」の雰囲気が強いようだ。「制度が始まったばかりで、先行事例があまりないこともあり、同じ市内でも判断が分かれそうだ」と担当者は話す。

    郷土の歴史を「学問」

     九州7県では10校が開校した。各県教委によると、来年度以降も7校が開校予定だ。佐賀県多久市の3校では郷土の歴史風土を「多久学」として総合的に学ぶ。熊本県高森町の高森東学園はICTに力を入れる。山口県は昨年度初めて小中一貫校が登場。今のところ義務教育学校の導入予定はないという。

    ◇…九州の義務教育学校…◇

    【福岡】上陽北●ほくぜい学園(八女市、●はさんずいに「内」)

    【佐賀】東原庠舎とうげんしょうしゃ東部校、中央校、西渓校(多久市)、大町ひじり学園(大町町)、玄海みらい学園(玄海町)

    【大分】碩田学園(大分市)

    【熊本】高森東学園(高森町)

    【鹿児島】鶴荘学園(出水市)、坊津学園(南さつま市)

    ◆住民とともにあり方考えて

     和光大学の山本由美教授(教育行政学)の話 義務教育学校やその源流の小中一貫校は、低学年の英語教育に中学教員の指導力を活用できるなど利点もある。ただ、「教育的メリット」をうたいつつも、人口減少に悩む地域では、学校を残すための策として広がった側面が強い。今後、議論が「統廃合ありき」にならないようにすべきだ。

     小学生が徒歩通学で見る景色は、心身の発達や地域とのつながりを育む上で重要とされている。また、地域にとっても子どもの姿が活力となる。統廃合によって校区が広がり、バス通学の子が増えた場合の弊害についても考慮が必要だ。

     制度の目新しさにとらわれず、地域と子どもたち双方の利益を見極めて、住民と一体となって学校のあり方を考えていくことが求められる。

    2017年09月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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