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    七隈線延伸、手探り続く

    • 陥没事故現場で行われているボーリング調査(7日午後、福岡市で)
      陥没事故現場で行われているボーリング調査(7日午後、福岡市で)

     福岡市のJR博多駅近くで起きた大規模陥没事故で、6月に再開された市営地下鉄七隈ななくま線の延伸工事。市はトンネル内の地下水や土砂を抜く方法を検討するためのボーリング調査を進めているが、見えない地中の状況の把握には困難が伴う。掘削工事の着手は年末以降になる見込みで、2020年度中を予定している延伸部分の開業は微妙な情勢となっている。

    ◆複雑な地質

     事故は、昨年11月8日未明に発生。地下約25メートルで掘り進められていたトンネルの天井部分が崩れ、地表部分が幅約27メートル、長さ約30メートルにわたって陥没し、工事は中断した。

     国の有識者委員会が3月にまとめた報告書では、工事再開に向けて、トンネル内に流れ込んだ土砂や地下水を抜く際は、「周辺へ影響が生じないよう慎重に行う必要がある」と注文を付けた。

     報告書が慎重な対応を求めた理由は、トンネル上部の岩盤層の強度や厚さにムラがあるなど、現場の地質構造が複雑なことにある。トンネル内が地下水や土砂で埋まっていることで地中のバランスが保たれている可能性があり、地下水などを抜く方法を誤れば、バランスが崩れて再び陥没する恐れがあるという。

     このため、市は地中の状況を把握しようと、6月8日の工事再開にあたり、現場周辺でボーリング調査を始めた。

    ◆ポイントは「水」

     専門家がそろって工事のポイントに挙げるのが、地下水の存在だ。

     市の建設技術専門委員会委員長の樗木ちしゃき武・九州大名誉教授(都市工学)は「工事で最も難しいのは水抜き。トンネル内の水を抜く時は、一定の圧力が保たれるようにする必要がある」と話す。内部の圧力が下がれば、再度崩壊するリスクが生じるという。

     「水は恐ろしい」と語るのは、建設技術専門委委員の安福規之・九州大教授(地盤工学)。安福教授は、トンネル内の水を抜いても、上部の岩盤を通じて水が入ってくれば、また陥没する可能性があることから、薬液の注入による地盤改良で水の動きを抑制することの重要性を説く。

    ◆費用も不透明

     市はこれまでに17か所でボーリング調査を実施し、土壌などの分析を進めている。慎重を期すため、今後は約30か所まで増やす予定だ。国の有識者委で委員長を務めた西村和夫・首都大学東京教授(トンネル工学)は「地中の状態を100%把握する方法はないが、調べれば調べるほど信頼度は上がり、リスクは減る」と指摘する。

     調査にはあと1~2か月かかり、その結果や建設技術専門委の意見を踏まえて、市は地下水などを抜く作業に移行する。また、現場付近の掘削には、固い岩盤を掘るのに適しているとされる「ナトム工法」が採用されていたが、工法を見直すことから、実際に掘削を再開するのは年末以降にずれ込む見通し。工法によって費用がどれだけ膨らむかも不透明だ。

     延伸部分の開業は、予定している20年度中に間に合わない可能性もあるが、市交通局は「事故の再発は許されず、安全第一で取り組みたい」と話している。

    2017年08月08日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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