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    南大東島(沖縄)――開拓民の文化に触れる

    琉球と和、響き合う地

    • 開拓民が最初に上陸したという西港には、かつてクレーンで人や荷物をつり上げるのに使っていたボイラー小屋の石壁が残っていた
      開拓民が最初に上陸したという西港には、かつてクレーンで人や荷物をつり上げるのに使っていたボイラー小屋の石壁が残っていた

     楕円だえん形の葉を茂らせる常緑樹「フクギ」の並木を抜けると、力強い和太鼓の音が聞こえてきた。かつて八丈島(東京)から来た開拓民が伝えてきた「大東太鼓」を、子どもたちが練習しているのだ。太鼓の両側に1人ずつ立ち、打ち合う。沖縄のエイサーとはまた違った和の響きに、この島独特のなり立ちを感じた。

     沖縄本島から東に約360キロ。太平洋に浮かぶ周囲20キロの小島に、八丈島からの開拓民23人が上陸したのは1900年(明治33年)の1月23日のこと。それまでは「ダイトウビロウ」と呼ばれるヤシの原生林に覆われた無人島だった。

     人々はビロウを伐採して住居を建て、食料となる野菜や穀類の種をまき、サトウキビを栽培。2年目には黒糖80俵を製造したというから驚きだ。沖縄からの移民も始まり、双方の風習が混ざった独特の「大東文化」が育まれた。

     広々としたサトウキビ畑を見ながら車で走っていると、道端に5~6体のお地蔵さんが並んでいた。地蔵信仰は沖縄本島や県内のほかの離島にはない。そばに立てられた案内板を読むと、最も古いものは、00年11月に八丈島から来島した大沢仁太夫の遺言により、妻が建てたという。

     「私も『八丈系』なんですよ」。案内を頼んだ南大東村観光協会スタッフの菊池涼子さん(60)が教えてくれた。曽祖父母が16年に八丈島から入植し、菊池さんは4代目。子どもの頃は、お盆やお彼岸になるとお地蔵さんに煎餅などを供え、家族でお参りをした。曽祖父母の家に遊びに行くと、「ようおじゃったのぉー(よく来たね)」と柔らかい八丈方言で迎えられたそうだ。

     那覇からの船が着いたと聞いて、島の南にある亀池港に足を運んだ。岸壁にクレーン車が止まり、船の積み荷をつり上げている。南大東島は、周囲が断崖絶壁で外海の荒波が押し寄せるため、船が接岸できない。このため、人も停泊した船から鉄製のゴンドラに乗って、約10メートル上の岸壁につり上げてもらう。残念ながら今回は時間が合わず、その様子は見られなかった。

     夜、島名物「大東寿司すし」を食べに行った居酒屋で、女将おかみ喜友名十百美きゅうなともみさん(64)が「今はゴンドラだけど、昔は縄で編んだ『もっこ』に板を敷いたものに乗って運ばれた」と教えてくれた。島には高校がなく、子どもたちは15歳になると沖縄本島などに進学する。喜友名さんもかつては那覇の高校に通い、息子や娘も本島に送り出した。「メールがある今と比べて、昔は涙、涙の別れでしたよ」

     「十五の春」に島を出て、そのまま沖縄本島や本土に就職する人も多い。9月に大東神社で行われる島一番の行事「豊年祭」では、そうした人たちも帰省して、八丈風の神輿みこしや江戸相撲などの奉納行事が行われる。子どもたちの大東太鼓や琉球伝統の「沖縄角力すもう」、エイサーなども披露され、近年は観光客が増えているという。

     118年の島の歴史を受け継ぐ太鼓の音と人々のにぎわいを想像した。秋にまた来て、祭りを見てみたい。(文と写真 生活文化部・玉城夏子)

    ◆固有の自然環境、ツアーで体験

    • 美しい星空の下でダイトウコノハズクを観察できて感激した
      美しい星空の下でダイトウコノハズクを観察できて感激した

     固有の自然環境も魅力の一つ。「オフィス・キーポイント」が行っているナイトツアー(4500円)では、国指定天然記念物のダイトウオオコウモリを観察できる。体長20センチほどのダイトウコノハズクに出会えることも。島には200以上の鍾乳洞があり、珍しい形の鍾乳石や地底湖が見られる探検ツアー(7500円)もある。

    ●あし 南大東空港を発着する飛行機は那覇便のみで約1時間。南大東島や北大東島と那覇を結ぶ船は約15時間。

    ●問い合わせ 南大東村観光協会=(電)09802・2・2815

    ◆味…深海魚や貝、海の幸満喫

     島では、深海魚の「ナワキリ(クロシビカマス)」を刺し身やバター焼きにしてよく食べる。縄をかみ切るほど歯が鋭いことからそう呼ばれるそうだ。居酒屋「いちごいちえ」((電)09802・2・2359)では、身を凍らせ、硬い小骨ごと切って食べやすくした刺し身(税別1000円)=写真右=を、酢みそやしょうゆでいただく。白身だが脂がのっていて美味。あっさりした塩焼き(同600円)=写真左=も味わえる。地元でとれるヒラミ貝を使った「ヒラミそば」(同800円)は、島名物「大東そば」の少し縮れた麺に、貝のだしがきいたスープが絡まっておいしい。

     地元でとれたサワラなどをタレに漬け込んでから握る「大東寿司」は、八丈島がルーツ。店や家庭ごとにタレの味わいが異なるという。

    2018年04月16日 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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