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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    軽の新しい価値、ダイハツ キャスト (Vol.481)

    • 新しいダイハツの軽「キャスト」。上質な軽自動車という新しい価値を生み出した
      新しいダイハツの軽「キャスト」。上質な軽自動車という新しい価値を生み出した

     ダイハツ工業から、「キャスト」という名の新しい軽乗用車が誕生した。やや車高を高めに設定したSUV(スポーツ用多目的車)風のクルマだ。

     雰囲気の異なる3タイプ「スタイル」「アクティバ」「スポーツ」をそろえ、それぞれの個性に合った外観や走りの性能を付与したところが、これまでにない新しい価値の提案だ。

     「スタイル」は、日常的に利用できる都会派感覚の車種。「アクティバ」は、アウトドアでの活動にも便利な最低地上高のゆとりを備える。「スポーツ」は、運転と走りを楽しみたい人向けだ。価値観が多様化する時代を背景に、幅広いユーザーの期待に応えようとしている。

     発売前には、ダイハツ版のスズキ「ハスラー」かとのうわさもあったが、実車を目の前にするとまったく異なる趣が感じられた。


    「スタイル」と「アクティバ」に試乗

     今回、試乗できたのは、「スタイル」と「アクティバ」のFF(前輪駆動)車である。ほかに、四輪駆動車も販売されている。

     クルマを見てまず印象深いのは、存在感を与える上質さだ。車体色には深みがあり、塗装がキラキラと輝いて見える。

     室内のしつらえも上質だ。登録車のコンパクトカーと比べても引けをとらないだろう。

    • 上質な仕上がりのインテリアは、より上級のクルマのようだ
      上質な仕上がりのインテリアは、より上級のクルマのようだ
    • たっぷりとした大きさのシートにゆったり座ることができる
      たっぷりとした大きさのシートにゆったり座ることができる

    走りの性能は?

    • 自然吸気エンジンでも、快適に走る。燃費は、FF車で30km/L(JC08モード)
      自然吸気エンジンでも、快適に走る。燃費は、FF車で30km/L(JC08モード)

     見た目の印象と違わず、試乗をしても実用一点張りの軽という一般的な概念を超えた乗り味を示した。

     最初に試乗した「スタイル」のほうは、自然吸気(NA)エンジン車で、トランスミッションはCVT(自動無段変速機)である。

     アクセルを踏むと、走り出しからしっかりとした乗り心地を伝えてきた。的確にクルマが反応している感じだ。やや硬めの乗り心地と言えるが、それでも体が跳ねるような硬さではない。後輪のほぼ真上に座ることになる後席でも、路面の影響を受けて体が跳ね上がってしまうようなことはない。

     しかも、走っている最中の室内は、とても静かだ。

     座席は、前後ともゆったり座らせる広さがあり、運転中の安定した運転姿勢を確保し、また快適な乗り心地に一役買っている。

     52馬力の自然吸気エンジンは、軽快に「スタイル」を走らせてくれる。近年の軽自動車で驚かされるのは、ターボエンジン車に比べて廉価な自然吸気エンジン車が、文句のない走りを実現することだ。車体の軽量化も一役買っているのだろう。

     そして、平坦な道では、速度を上げてもエンジンが(うな)るような騒音を出さない。エンジンとCVTと軽量化の調和が、「スタイル」を快活に走らせるのだ。

     上質さを高めた「スタイル」だが、停車してアイドリングストップした後のエンジン再始動において、スターターモーターのキュルキュルいう音とともにエンジンがかかるところは、軽自動車であることを嫌でも実感させる。

     対して、モーター機能付き発電機からベルト駆動でエンジンを再始動するスズキのシステムには、気づかぬうちにエンジンがかかっている快適さがあり、軽自動車をいっそう上質な乗り物にしている。せっかくの「スタイル」の上質さも、いまのままでは半減する。

    • 後席は24センチも前後にスライドでき、一番前にしても普通に座れる
      後席は24センチも前後にスライドでき、一番前にしても普通に座れる
    • 荷室の床下に、小物入れの空間が残されている
      荷室の床下に、小物入れの空間が残されている

    感動のパワフルさ「アクティバ」

    • 「アクティバ」は、「スタイル」に比べ3センチ最低地上高が上がり、未舗装路を走る際にも床下を打つ懸念を和らげる
      「アクティバ」は、「スタイル」に比べ3センチ最低地上高が上がり、未舗装路を走る際にも床下を打つ懸念を和らげる

     ターボエンジン車「アクティバ」は、軽くアクセルペダルを踏むだけで勢いよく走るそのパワフルさに感動した。とにかく、速い。

     そのうえで、「スタイル」に比べ3センチ高い最低地上高により、運転席からの目線もやや高くなって、SUVとしての運転感覚がより増してくる。

     走り味も、「スタイル」とは若干異なる。扁平(へんぺい)比のより小さい大径タイヤを装着し、悪路でも安全に走破できそうな、ゆったりとした動きをする。今回は、舗装路のみでの試乗だったが、悪路をものともしない頼もしさが乗り心地から伝わってきた。

     座席は、構造などは「スタイル」と同じだそうだが、表皮が異なることによって、悪路からの衝撃を受けても体に響きにくそうな、厚みを感じさせた。

     そのような運転感覚や乗り心地を象徴するかのように、外観や室内のデザインにおいても、「アクティバ」は野性味のある要素が加えられ、個性的な表情に仕上げられている。

     過去、軽自動車には、乗用に使えるボンネットバンや、ハイトワゴンと呼ばれる背の高い車種の投入など、新たな軽の価値を提案するクルマがたびたび登場してきた。

     今回の「キャスト」も、従来にない存在感や乗り味、多様な価値観をユーザーに伝えるという、軽自動車の新しい魅力を提案する一台と言える。

    • インテリアデザインの主要部分は共通だが、グローブボックスやエアコンディショナーの吹き出し口などに「アクティバ」用デザインが施され、個性を際立たせている
      インテリアデザインの主要部分は共通だが、グローブボックスやエアコンディショナーの吹き出し口などに「アクティバ」用デザインが施され、個性を際立たせている
    • 最高出力64馬力のターボエンジンは、CVTとの組み合わせで猛然たる加速をもたらす
      最高出力64馬力のターボエンジンは、CVTとの組み合わせで猛然たる加速をもたらす

    2015年11月04日 16時17分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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