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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    実用的スポーツ車 ジャガー「F-PACE」(Vol.501)

    • ジャガーらしい趣は、ガソリンエンジン車でより感じられた。こちらはR-SPORT
      ジャガーらしい趣は、ガソリンエンジン車でより感じられた。こちらはR-SPORT
    • 排気量3000ccのV型6気筒スーパーチャージャー付きのガソリンエンジンは、340馬力と380馬力の2仕様がある
      排気量3000ccのV型6気筒スーパーチャージャー付きのガソリンエンジンは、340馬力と380馬力の2仕様がある

     ジャガーに、初のSUV(スポーツ用多目的車)が誕生した。それが、F-PACE(ペイス)だ。車名の頭にFを付ける車種は、ほかにスポーツカーのF-TYPE(タイプ)があり、ジャガーではF-ペイスを「究極の実用的なスポーツカー」と位置付けている。

     F-ペイスが走り去る後ろ姿は、リアウィンドーが薄く、後輪を覆うフェンダーが大きく膨らみ、車高こそ高めだが、その姿はまるでスポーツカーのようだ。

     エンジンは、排気量3000ccのV型6気筒ガソリンのスーパーチャージャー付きと、2000ccで直列4気筒ディーゼルのターボチャージャー付きの2種類がある。このうちガソリンエンジンの方は、車種によって最高出力が340馬力と380馬力の仕様がある。トランスミッションは、いずれも8速オートマチックだ。

     今回は、馬力の異なるガソリン車それぞれと、ディーゼル車の計3台に試乗することができた。結論を先に言えば、ガソリン車の方がジャガーとしての趣に合っていると感じた。

    • アクティビティキーを手首に着けてリアゲートのジャガーロゴにかざせば、リモコンキーを車内に置いたままドアの開閉ができる
      アクティビティキーを手首に着けてリアゲートのジャガーロゴにかざせば、リモコンキーを車内に置いたままドアの開閉ができる
    • 彩り豊かな内装を選択できるのも新車購入の楽しみの一つ
      彩り豊かな内装を選択できるのも新車購入の楽しみの一つ

     ガソリン車でもさらに印象がよかったのは、最上級車種のSだ。試乗したSには、ホイール径が22インチで扁平(へんぺい)率40%の太いタイヤが装着されていたが、乗り心地を含め、仕上がりが一番よかった。

     Sは最上級車種で価格が981万円(消費税込み)というのだから、出来がいいのは当たり前だと言われればそれまでだが、扁平率40%という薄いタイヤは、へたをすると乗り心地や操縦性に悪影響を与えかねない。路面からの衝撃を吸収しきれなかったり、幅が太いことによって路面の影響でハンドルを取られたりすることがあるからだ。

    • 後席背もたれは、4:2:4の分割で前へ倒すことができ、荷室容量を調節できる
      後席背もたれは、4:2:4の分割で前へ倒すことができ、荷室容量を調節できる

     しかし、F-ペイス Sは、タイヤ接地面が路面に密着し、車体側のサスペンションとの調和もよく、路面の粗さを巧みに吸収してしまう。またハンドルを取られることもなく、操作の通りにカーブを曲がっていく様は痛快そのものだ。

     380馬力のエンジンは、通常の走りではいたって物静かで、快適な乗り心地を邪魔することがない。アクセルペダルを深く踏み込み、積極的に運転を楽しもうとした際も、荒々しい走りにはならず、滑らかに、それでいて素早く速度に乗せていく洗練さを伝えてきた。

     長年にわたり高性能スポーツカーや高級4ドアセダンを作り続けてきたジャガーの面目躍如たる乗り心地と走りをもたらすSUVである。

    • 目線こそやや高くなるが、スポーツカーのように運転を楽しませてくれた
      目線こそやや高くなるが、スポーツカーのように運転を楽しませてくれた

     一つ下の車格となるR-SPORTという車種も、ガソリンエンジンの出力は340馬力に少し下がるが、排気量3000ccにスーパーチャージャーによる過給を得て、存分な加速性能を味わわせる。だが、Sに比べ、R-SPORTは仕上げにやや粗さが感じられた。

     V6ガソリンスーパーチャージャーエンジンの力に不足はないが、アクセル操作に対する力の出し方がやや唐突だった。また、タイヤはSより扁平率の大きい50%で、幅も若干狭い寸法となるが、路面の凹凸による突き上げを体に伝えてきたのだ。一言で言えば、全体的に洗練さに欠ける。

    • ディーゼルターボエンジンは、排気量が2000ccの直列4気筒
      ディーゼルターボエンジンは、排気量が2000ccの直列4気筒

     ディーゼル車は、その中の中間的車種であるPRESTIGE(プレステージ)に試乗したが、エンジン性能などはグレードに関係なく同一である。

     ディーゼルエンジン特有のガラガラという騒音はほとんど気にならない水準に収められていたが、気になったのは発進時や、低速からの加速における力不足な感触だ。

     F-ペイスは、車種や装備で多少の差はあるが、1900キロを超える重さのSUVである。これを走り出させるのに、排気量2000ccのエンジンはやや小さすぎるようだ。もちろん、小さな排気量を補うため、ターボチャージャーを装備して過給するわけだが、エンジン回転数が低い発進時や、市街地など日常的な速度域からの再加速では、どうしてもターボチャージャーが機能しだす前の応答性が問われる。ここでは、2000ccエンジンの“地”が出てしまうのだ。

    • 後ろ姿は、リアウィンドーが薄く、フェンダーが張り出し、スポーツカーのようだ
      後ろ姿は、リアウィンドーが薄く、フェンダーが張り出し、スポーツカーのようだ

     エンジンを毎分2000回転以上に保つようにするため、走行モードでダイナミックを選択すれば、より活気ある走りが得られるが、エンジンを常に高めに回したのでは燃費に影響を及ぼし、何のためにディーゼルエンジンを選んだのかわからなくなりかねない。

     ディーゼル車の廉価車種PURE(ピュア)からガソリン車のSまでの間には、342万円の価格差があるが、F-ペイスで、ジャガーらしさを満喫したければ、今のところSが最良と言えるだろう。

    2016年08月02日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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