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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    独創的外観と快適走行 ルノー・カングー(Vol.503)

    • 思わず笑みがこぼれるような姿と、使い勝手の良さで人気を保つカングー
      思わず笑みがこぼれるような姿と、使い勝手の良さで人気を保つカングー
    • 前のドアは大きく開き、後ろのドアはスライド式。床が低く、乗り降りしやすい
      前のドアは大きく開き、後ろのドアはスライド式。床が低く、乗り降りしやすい

     フランス車のルノー「カングー」に、ダウンサイジングのガソリンターボエンジンとツインクラッチ式のトランスミッションを組み合わせた、新しい車種が追加された。「カングー・ゼン(EDC)」が、今回の試乗車だ。

     カングーは、商用の配送バンの使い勝手を生かした乗用ワゴン車だ。1997年に誕生し、その独創的な外観によって日本でも安定した人気を保持している。

     現在は、2007年にモデルチェンジをした2世代目となり、独特な外観は継承され、車体が大型化されている。全長は4.3メートル弱で小型車ほどだが、全幅が1.8メートルを超え、市街地で路地を駆け抜けたり、駐車したりする際にはやや手に余るかもしれない。

     排気量1200ccの直列4気筒ガソリンターボエンジンは、115馬力の出力を備える。これに、ツインクラッチ式の6速オートマチックが組み合わされる。

     車幅があり、車高も1.8メートルを超えるカングーは、かなり大柄に見える。この車体に、わずか1200ccのエンジンで事足りるのかと思うかもしれない。しかし例えば、フォルクスワーゲン・ゴルフの標準車種も同様の小排気量ガソリンターボエンジンを搭載している。燃費性能と走行性能を両立させるため、ヨーロッパでは珍しくないエンジン容量である。

    • 排気量1200ccのガソリンターボエンジンは、6速のツインクラッチ式オートマチックとの組み合わせで軽快な走りをもたらす
      排気量1200ccのガソリンターボエンジンは、6速のツインクラッチ式オートマチックとの組み合わせで軽快な走りをもたらす

     運転してみると、やはりよく走る。低い回転数から十分な力があり、発進から調子よく速度に乗せていける。また、ツインクラッチ式のオートマチックトランスミッションは、奇数段と偶数段それぞれにクラッチを持ち、次のギアへ変速準備をしておいてからクラッチをつなぐようにして変速するので、加速中の息つきも感じさせない。

     室内が広く、人や荷物を満載にして出かけるのに便利なクルマだけに、乗員や荷物の重量が増えても安定を保つよう、しっかりとした乗り心地に仕上げている。硬くて跳ねるような不安定さはなく、タイヤがしっかり路面をつかんで走り、頼りがいもある。

     前の席は十分な大きさがあって、体を預けることができる。クッションの厚みを感じさせ体重を受け止めるような座り心地だが、同時に、腰をきちんと支えてくれるので、もし商用で終日運転しなければならないような場面でも、疲れにくいのではないかと思う。

    • 座り心地がよく、大きさも十分で、体を預け、運転に集中できる前席
      座り心地がよく、大きさも十分で、体を預け、運転に集中できる前席
    • 背の高さをいかした見晴らしのいい視界で、運転もしやすい
      背の高さをいかした見晴らしのいい視界で、運転もしやすい

     メーカーが仕事用のクルマとしても視野に入れて開発する時、コストが一番優先されるはずだが、それでも人がいかに快適に移動できるかを考えたクルマとなっていることがうれしい。

    • 前席背もたれの後ろ側に設けられた、後席用の折り畳み式テーブル
      前席背もたれの後ろ側に設けられた、後席用の折り畳み式テーブル

     後席は逆に、座席を折りたたんで荷室空間を広げることも考慮されているからだろう、座席はやや硬めで薄い作りに見える。それでも、背もたれをやや立てた姿勢で座っていると、背筋が伸びて腰が落ち着き、また、座席と床との差が十分にあって、足を下におろして座れるので、実は疲れにくい仕立てとなっている。

     また、元来、荷物をたくさん運べるように考えられたクルマだから、床が低く、それによって、スライドドアを開けた後席への乗り降りもしやすい。重い荷物でも積み込みやすくした床の低さが、人の乗り降りでも役立っているのである。

    • 後席の天井に設けられた小物入れ
      後席の天井に設けられた小物入れ
    • 前席の天井に設けられた小物入れ
      前席の天井に設けられた小物入れ

     高速道路も走った。アクセル全開で加速をさせてみると、このエンジンは最高回転数まで、胸のすくような加速を味わわせてくれた。そして、高速で走行中も、エンジンには力の余裕があり、街を駆けるためだけのエンジンではないことを教えてくれる。高速巡航中のエンジン回転数は、時速100キロで毎分2000回転ほどであったから、高速燃費もそれほど悪くはないだろう。

     独創的な外観以外、とくに何か(すご)い性能を備えているクルマではない。それでも、毎日乗っても嫌にならないのではないかと思わせる、普通だけれど心地よいという価値を備えた一台だ。仕事にも行楽にも、カングーがあれば快適な暮らしを送れるのではないかと思った。

    2016年08月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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