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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    BMWの底力を実感 新型5シリーズ(Vol.515)

    • 試乗した540iのM Sportは、直列6気筒ガソリンターボエンジンを搭載し、久しぶりに直列6気筒エンジンの伸びやかな加速を堪能した
      試乗した540iのM Sportは、直列6気筒ガソリンターボエンジンを搭載し、久しぶりに直列6気筒エンジンの伸びやかな加速を堪能した
    • 直列6気筒エンジンは、燃費性能など効率を高めた新世代のガソリンターボエンジン
      直列6気筒エンジンは、燃費性能など効率を高めた新世代のガソリンターボエンジン

     独BMW社の中型4ドアセダンである5シリーズが、フルモデルチェンジをした。新型の特徴は、部分自動運転と呼ばれる運転支援機能が採用されていることだ。

     今回試乗したのは、新型5シリーズのうち、ディーゼルターボエンジンの523dと、直列6気筒でガソリンターボエンジンの540iのM Sportである。ほかに、ガソリンエンジンの530i、四輪駆動の540i xDriveが選べる。また半年くらいあとには、プラグインハイブリッド車の530eも発売される予定だ。

     新型5シリーズは、まず、ディーゼルエンジン車もガソリンエンジン車も運転感覚や乗り心地において、非常に洗練された印象が強く、走っていてとても快い。車体は、風洞の中で空気力学を追究したというだけあって、高速道路を走っても風切り音を意識させず、走行中の静粛性が高い水準にある。たとえば後席に座っていて、高速走行中も前席の人と普通の声で会話ができるほどだ。

     ドイツといえば、速度無制限のアウトバーンを思い浮かべる人が多いかもしれない。新型5シリーズの高速走行安定性は当然ながら優れ、それでいて、乗り心地が大変によい。路面の継ぎ目などの段差をタイヤが超えても、トンッと軽やかに乗り越え、その上下振動がスゥッと収まり、乗っている人の体に衝撃を感じさせないのである。

    • 運転者のために、運転者を中心とした運転席のつくりであるところがBMWのこだわり
      運転者のために、運転者を中心とした運転席のつくりであるところがBMWのこだわり
    • 見るからにタイヤ側面が薄い扁平(へんぺい)タイヤを装着していたが、乗り心地は素晴らしかった。なおこのタイヤは、パンクしても走行を続けられるランフラット構造を備える
      見るからにタイヤ側面が薄い扁平(へんぺい)タイヤを装着していたが、乗り心地は素晴らしかった。なおこのタイヤは、パンクしても走行を続けられるランフラット構造を備える

     静かな室内と快適な乗り心地にまず、競争の激しい数ある中型セダンの中で優れた上質さを覚えさせた。駆けぬける(よろこ)びを標榜(ひょうぼう)するBMWであるだけに、運転の楽しさを求めるのが第一ではあると思うが、助手席や後席に乗ることにも大きな魅力を感じさせる4ドアセダンに仕上がっていた。

    • 室内は常に静粛性に優れ、後席の快適性も高かった。もう少し座面に高さがあるともっと腰を落ち着けられるだろう
      室内は常に静粛性に優れ、後席の快適性も高かった。もう少し座面に高さがあるともっと腰を落ち着けられるだろう
    • 荷室は、それほど深さはないが奥行きは十分にある
      荷室は、それほど深さはないが奥行きは十分にある

     運転者としてハンドルを握っての印象も、大変よかった。新型5シリーズは、四輪操舵(そうだ)の技術が採用され、時速約60キロを境に、それ未満の低速域では後輪が前輪と逆向きに操舵され、それ以上の速度域では前輪と同じ方向に操舵される。これによって、低速側では市街地などでいっそう小回りが利くようになり、高速側ではより安定した走りが得られる。

    • カーナビゲーションに映し出されるクルマ周辺の画像。四輪操舵を採り入れた新型5シリーズはとても小回りがきく
      カーナビゲーションに映し出されるクルマ周辺の画像。四輪操舵を採り入れた新型5シリーズはとても小回りがきく
    • ディーゼルエンジン車は、定期的に排ガス浄化装置のための尿素水を補給する必要がある
      ディーゼルエンジン車は、定期的に排ガス浄化装置のための尿素水を補給する必要がある

     新型5シリーズの最小回転半径は5.7メートル(タイヤサイズによっては5.8メートル)とのことだが、実際に運転してみると相当に小回りが利いて、塀と接触しそうに思っても曲がり切れてしまう様を体験することができた。かつて、日本でも四輪操舵が流行した時代があるが、当時は、運転感覚に異質な印象を残す場合があった。しかし、新型5シリーズの四輪操舵はまったく特別なことを意識させない完成度の高さに驚かされた。教えられなければ気づかないだろう。

     523dのディーゼルターボエンジンは、振動や騒音も少なく、もちろんディーゼルらしい音は耳に届くが、うるさかったり鬱陶(うっとう)しかったりする音ではない。そして、ディーゼルエンジン特有の力強さで、発進加速から確実に速度にのせていく。

     540iの直列6気筒ガソリンターボエンジンは、まさに夢心地といえるほど滑らかで伸びやかな加速を体験させてくれる。かつて、BMWといえば直列6気筒ガソリンエンジンの魅力がまず語られる自動車メーカーだったが、近年は、燃費向上のためダウンサイジングされ、なかなか運転する機会がなくなっている。そうしたなかで、燃費も踏まえた最新の直列6気筒ガソリンターボエンジンを運転する喜びは大きい。

    • ハンドルのスポーク部分に設けられた運転支援の操作スイッチは、一目瞭然でわかりやすく、操作もしやすい
      ハンドルのスポーク部分に設けられた運転支援の操作スイッチは、一目瞭然でわかりやすく、操作もしやすい

     新型の特徴となる「部分自動運転」は、速度を自動的に維持したり前のクルマに追従したりしながら、自動的にハンドル操作して車線内を走行し続ける機能を備える。ハンドルに設けられたスイッチ操作がまず大変にわかりやすく、初めて乗ってもすぐに使いこなせるのはさすがと感じた。たとえばアウトバーンを高速で走っていても素早く的確に認識できるスイッチに仕上がっているのである。

     車線の白線を認識して自動ハンドル操作で進路を定める車線維持機能も、高速道路のインターチェンジなどのよほど急なカーブ以外は、ほとんど問題なく自動的にハンドル操作をして車線を維持する。もちろん、現段階の運転支援機能は運転者がハンドルを握っていることを前提とするが、新型5シリーズの制御は、自動操作の部分に不安が少ないうえ、クルマを自然な動きで走らせる。BMWの技術力もさることながら、自動運転へ向けた機能開発が、まさに日進月歩であることを実感させた。

     BMWの新型5シリーズの試乗を終え、心に浮かぶのは、技術進歩への感心と洗練された乗車感覚への感動であった。これほどよく仕上げられ、喜びに満ちたクルマはめったにあるものではない。BMWの底力を実感させる一台である。

    2017年03月14日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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