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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    新技術が満載のセダン トヨタ カムリ (Vol.526)

    • 屋根が後ろへ向かって長く、室内空間の広さを見せている。そのうしろは、クーペのようなファストバックスタイル
      屋根が後ろへ向かって長く、室内空間の広さを見せている。そのうしろは、クーペのようなファストバックスタイル

     トヨタの中型セダンであるカムリが、フルモデルチェンジをして10世代目となった。今回は、先にプリウスなどで導入した、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)と呼ばれる新しいプラットフォームを採用し、エンジンなども一新され、新型車と呼ばれるにふさわしい変化を遂げている。

     さらに新型カムリでは、内外装のデザインに力を入れ、開発責任者いわく「デザイナーが描いたスケッチそのままに市販車を実現した」とのことである。

     その顔つきは、目をつり上げて、口を大きく開けたようなデザインで、交通の流れの中にあっても目立ちそうだ。また、室内の広さを印象付けるため、屋根が後ろまで長く、そのあとのリアウィンドーは傾斜を強めたクーペのように流麗なスタイルを採り入れている。

    • 室内の広がりや上質さがデザインされた内装
      室内の広がりや上質さがデザインされた内装
    • 広々とした室内だが、路面からの微振動の収まりがよくなく、乗り心地に改善の余地を残す後席
      広々とした室内だが、路面からの微振動の収まりがよくなく、乗り心地に改善の余地を残す後席

     前型車から、国内市場におけるカムリはすべての車種がハイブリッドとなり、今回もそれを継承する。基本となるエンジンは新開発され、最大熱効率が41%に達するという。熱効率とは、燃料を燃やすことで発生したエネルギーのうち、どのくらいの割合を動力として有効活用しているかということだ。一般的にガソリンエンジンの熱効率は30~35%ほどといわれるので、相当に効率の高いエンジンだといえる。これにモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを搭載する。これにより、燃費性能は、ガソリン1リットルあたり33.4キロと軽自動車並みの低燃費を実現した。

    • 新エンジンと組み合わされたハイブリッドシステムを搭載する
      新エンジンと組み合わされたハイブリッドシステムを搭載する

     運転席に乗り込むと、ダッシュボード中央がうねったような大胆なデザインが目に飛び込んでくる。外観だけでなく、室内のデザインにも凝った様子がうかがえる。とはいえ、トヨタ車は、どのクルマに乗っても運転操作に戸惑うことはなく、扱いやすさがある。

     アクセルペダルを踏むと、ハイブリッド車の常で、まずモーターで静かに発進した。だが、プリウスの新型で実感したような、モーター走行領域が増えた印象はない。アクセルペダルをやや強く踏み込むと、すぐにエンジンが始動した。従来のニッケル水素に替えて、新型カムリも今回からリチウムイオンのバッテリーを搭載するが、その性能を十分に()かし切れていないのか、あるいは車両重量が重いせいなのだろう。

     新開発のエンジンは、熱効率が高く、また動力性能も優れているのだろうが、エンジンが始動したハイブリッド走行でのエンジン音や振動がはっきりわかり、モーター走行とハイブリッド走行との落差が大きいと感じた。前型は、もう少し滑らかであったのではないかと思う。

     TNGAの新プラットフォームを採用したことにより、操縦安定性は格段に向上した印象がある。車体がしっかりし、カーブなどでの手ごたえが確かになった。一方で、洗練された印象は少ない。組み合わされたタイヤとの相性もあるかもしれないが、タイヤが転がるゴロゴロとした感触が手や身体に伝わってくる。

     試乗をした2台は同じGという車種だが、一方はレザーパッケージといって内装が本革の仕様であり、こちらに装着されていたタイヤは寸法がより扁平(へんぺい)で太めであった。それにもかかわらず、かえってタイヤの接地感覚はよかった。サスペンションの設定と、タイヤ銘柄の違いによって異なる持ち味とが、合う場合と合わない場合があるのだろう。心を揺さぶるセダンとして開発したということであり、爽快な走りを目指し、扁平な寸法のタイヤを中心に仕上げられたのかもしれない。

    • 前席から後席までガラス天井となるパノラマムーンルーフが、GとGレザーパッケージにメーカー注文装備で設定されている
      前席から後席までガラス天井となるパノラマムーンルーフが、GとGレザーパッケージにメーカー注文装備で設定されている
    • 小型化されたリチウムイオンバッテリーシステムを後席下に搭載することにより、十分な広さを実現した荷室
      小型化されたリチウムイオンバッテリーシステムを後席下に搭載することにより、十分な広さを実現した荷室

     今回の新型で見栄えを上げ、機能を新開発し、性能を高めてきたのはわかるのだが、商品としての仕上げにまだやり残したことがあるのではないかと思わせた。たとえば後ろの座席も、広々とはしているが、走行中の細かい振動が収まりにくく、居心地は快適でない。しかも、パワーウィンドーを開閉するためのスイッチが設けられている部分の樹脂は、まるで最も安い材料を使っているのではないかと思えるほどそっけなく、300万円以上する上級セダンとは思えない貧相さだ。

     技術をすべて刷新すると、そのことに開発が集中するあまり、全体的なまとまりや細部の仕上げが不十分になりがちである。今後の熟成が期待される新型カムリであった。

    2017年08月22日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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