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    モータージャーナリストの御堀直嗣さんが、話題の新車に試乗、乗り心地、性能ついて詳しくお伝えするコーナーです。

    独自技術による優れた静粛性  日産「セレナe-POWER」(Vol.540)

    • 今回試乗をしたのは、3ナンバー車体のハイウェイスター仕様車
      今回試乗をしたのは、3ナンバー車体のハイウェイスター仕様車

     5ナンバークラス(総排気量が2000cc以下)のミニバンは、ミドルクラスミニバンと呼ばれ、トヨタのノアやヴォクシー、ホンダのステップワゴンなどが競い、国内市場では激戦区のひとつとなっている。日産自動車は、人気ミニバン「セレナ」(一部は3ナンバー)に、コンパクトカーのノートで先に採用されていたモーター駆動の「e-POWER(パワー)」搭載車を追加した。エンジンで発電してモーターで走行する一種のハイブリッド車だが、他社で普及したハイブリッド車がエンジンとモーターを併用して走行するのに対し、e-パワーはモーターのみでの走行なので、運転感覚に独自性がある。既存マンションなどでは、電気自動車(EV)を買う際、充電設備の確保が問題になるが、このe-パワーであれば、その心配もない。

    • 3列目の座席を左右側面にたたんだ状態。荷室の床は低く、たくさんの荷物を載せられる
      3列目の座席を左右側面にたたんだ状態。荷室の床は低く、たくさんの荷物を載せられる

     セレナに搭載される技術は、ノートのe-パワーと共通だが、より大人数や荷物を多く載せられるようにミニバン用として動力性能を高めている。今回、発電用エンジンを始動させず静かに走行できるマナーモードと、マナーモード実現のため事前にリチウムイオンバッテリーへ積極的に充電するチャージモードが新しく設定された。ほかにも、ノートのe-パワーでの経験を踏まえ、細かく改善された点を試乗で実感した。

     使用上日産が勧めるのは、スマートモードまたはECOモードでの運転だ。このどちらかを選択すると、アクセルのワンペダル主体の加減速を利用できる。ペダルから足を離すと、エンジンブレーキがかかったような減速をしながら、クルマが止まってくれる。もちろん、ノーマルモードを選べば他のクルマと同じように2ペダルでの運転になる。

    • エンジンルームには、1200ccの直列3気筒ガソリンエンジンと電気制御装置がぎっしり詰まっている
      エンジンルームには、1200ccの直列3気筒ガソリンエンジンと電気制御装置がぎっしり詰まっている

     始動後もリチウムイオンバッテリーに十分に充電されていればマナーモードの場合エンジンはかかっておらず、モーターのみでの発進と加速になる。このためEVのような感覚を味わえる。リチウムイオンバッテリーに90%の充電がなされている場合、日産社内の計測値で約2.7キロメートルのEV走行ができるという。例えば、幹線道路ではエンジンを使ってチャージモードで走行し、自宅近くの住宅地ではモーターのみで静かに走るという使い方も可能だ。

    • e-パワーやプロパイロットなどの機能を分かりやすく簡単に操作できる運転席
      e-パワーやプロパイロットなどの機能を分かりやすく簡単に操作できる運転席
    • e-パワー車両は、シフトレバーがバイ・ワイヤー式となり、操作方法はEVのリーフと同様になる
      e-パワー車両は、シフトレバーがバイ・ワイヤー式となり、操作方法はEVのリーフと同様になる

    • ハンドルの右側のスポークに設けられたプロパイロットのスイッチは従来通り。ただし、その作動はより自然な動きに改善されていた
      ハンドルの右側のスポークに設けられたプロパイロットのスイッチは従来通り。ただし、その作動はより自然な動きに改善されていた

     運転時、充電量が減ってエンジンが始動した際も、室内の静粛性がかなり高いと感じた。同じセレナでもエンジン車などに比べ、e-パワーでは静粛性向上の改良が特別に加えられているとの説明だ。急加速やチャージモードにしてエンジン回転数がそれなりに高くなるとエンジン音は耳に届くが、それ以外、普通の交通の流れに乗って運転する分には、エンジンで発電しながら走ってもエンジンの存在にほとんど気付かないほどだ。

     また、モーターのみによる駆動により加速の際の変速ショックがないのもe-パワーならではで、高い静粛性とともに、5ナンバークラスのミニバンでありながら1クラス上の上質さを感じた。

     ワンペダルでの運転では、ペダルを戻す減速の際の回生の働きがノートのe-パワーに比べ穏やかになり、違和感は格段に改善された。高速道路に入り、速度調節を細かく行うとき、ノートではアクセルペダルを緩めたときの減速が強すぎ、ギクシャクした速度調整になる傾向だったが、セレナe-パワーではその点も改良され、高速道路を巡航する際にもワンペダルを使い続けられるようになった。

     エンジン車と比べ、セレナのe-パワーは50万円ほど価格が上乗せになるが、選ぶ利点は大いにあると感じた。エコカー減税と自動車税減税を合わせると、e-パワーは最大で15万円ほどの減額になり、エンジン車等のエコカー減税に比べ10万円ほどお得になる。これを考慮すると、快適に利用できる利点は大きいように思う。

    • 福祉車両の車椅子仕様車。福祉車両においても、静粛性や滑らかな走りが移動の快適さに役立つはず
      福祉車両の車椅子仕様車。福祉車両においても、静粛性や滑らかな走りが移動の快適さに役立つはず
    • セレナe-パワーから追加装備された、マナーモード(左)とチャージモード(右)のスイッチ
      セレナe-パワーから追加装備された、マナーモード(左)とチャージモード(右)のスイッチ

     セレナe-パワーには、福祉車両も用意されている。エンジンを停止できるマナーモードを使うことによって、乗降場所まで静かに行くことができ、乗降中もエンジンのアイドリング音はないため、時間帯を問わず近隣への気兼ねを少なくできるのではないか。e-パワーならEVほど多くのバッテリーを搭載しないで済むため、車椅子を載せる3列目の座席付近の床を低くできる。このため、リアサスペンションの昇降機能と合わせ、乗降のためのスロープの傾斜をゆるくでき、安心感が高まる。

     e-パワーの静粛性や快適性、ワンペダルによる加減速の滑らかさなどは、福祉車両にとっても利点が大きいと感じた。

    2018年04月10日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    プロフィル
    御堀直嗣   (みほり・なおつぐ
     1955年、東京都生まれ 。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員等を務める。EV等にも詳しい。 スキューバダイビングや乗馬を楽しむアクティブ派でもある。
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