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    古今の作家を巡って専門家と読者からの感想、意見を紹介します。

    どっち派? 山崎豊子と宮尾登美子

     徹底した取材を基に戦争や社会の矛盾を問うた山崎豊子さんと、土佐の風土や日本の伝統文化に女性の生き方を重ねた宮尾登美子さん。今月は、大正末から近年までほぼ同時代を生きた2人の作家の対決です。ともに熱烈に支持する信奉者の多さが印象的でした。

    山崎豊子…不条理乗り越える雄姿

     社会派のイメージが強い山崎さんですが、初期作の舞台は生まれ育った大阪の商人の町、船場。かつて実家が商売をしていたという岡山県浅口市の妹尾洋子さん(73)は、昆布屋をモデルにしたデビュー作『暖簾のれん』(新潮文庫)を読んで「困難な時も曲がったことをしない」主人公に感銘を受けたそう。いい品を知恵と頑張りで安く商うのが真の大阪商人なのでしょう。

     大きなテーマを扱う転機となった『白い巨塔』については、「高潔な世界と思っていた、大学病院の階級社会や派閥抗争が描かれ、大学生の時読んでショックを受けた。タブーに斬り込んだ勇気にも感服する」と広島市の内さとしさん(72)が推薦です。

     心に残る投書が多かったのが『不毛地帯』(同)、『二つの祖国』(同)、『大地の子』(文春文庫)の戦争3部作。「シベリア抑留やアメリカの日系人の苦悩などを初めて詳しく知った。私のように戦争について学ぶきっかけを得た人も多いのでは」と兵庫県尼崎市、吉田浩子さん(46)。

     特に中国が舞台の『大地の子』には「残留孤児のつらい運命を知って、涙なしに読めなかった」という青森市、長牛由美さん(42)ほか、終戦まで朝鮮半島に住み中国東北部にも足を運んだ岡山県倉敷市の三宅正枝さん(90)から、「当時現地で受けた親切を思い出す」との声も届きました。

     死の直前まで執筆への意欲を燃やした山崎さん。遺作の『約束の海』(新潮文庫)が第1部完結のみで終わったことを嘆く声も多数。その一人で全長編を読破したという東京都品川区の矢吹正道さん(49)は山崎文学の魅力をこう語ります。「『そこまで調べるのか!』と綿密な調査に圧倒され、様々な不条理を乗り越える登場人物の雄姿に勇気づけられる」

     やまさき・とよこ 1924~2013年。大阪市生まれ。毎日新聞大阪本社勤務の傍ら小説を書き始め、1957年、『暖簾』を刊行。58年『花のれん』で直木賞。『女系家族』などを経て、63年から連載の『白い巨塔』が話題に。91年、大型社会派作家として綿密な取材と豊かな構成力で読者を魅了したとして菊池寛賞。その後も『沈まぬ太陽』などを発表した。

    宮尾登美子…女の毅然とした生き方

     「大きな社会問題を描く山崎さんはそうでないが、宮尾さんの作品は女流作家ということを意識せずにいられない」。読売新聞の企画で作家本人にインタビューしたこともある長年のファン、福井県敦賀市、谷川寿代さん(60)の投書に、なるほどと膝を打ちました。芸の道を究める人を追っても、自身の半生を自伝的に描いても、女の毅然きぜんとした生き方が貫かれています。

     多彩な推薦の中で目立った一つが日本画の大家・上村松園がモデルの『序の舞』(中公文庫)。「血を吐くような思いで絵に向かう激しい一生を描きながら、物語に漂う美しさに、きりっと一本筋が通った日本女性そのものを感じる」と千葉県館山市、小栗みさ江さん(55)。歌舞伎の名門の男性を愛し、支える女性を描く『きのね』(新潮文庫)も、「私の中では世界一の純愛小説」と神奈川県藤沢市、古口和子さん(58)から熱烈な支持が。ヒロインのモデルとされる女性の孫にあたる市川海老蔵さんの家族は今、がんと闘っていますが、「あなたの孫たちをお守り下さい」と願わずにいられないとか。

     『櫂』『春燈』『朱夏』『仁淀川』(すべて新潮文庫)と続く自伝的4部作には、土佐の風土や結婚、大陸からの引き揚げ体験などが反映しています。東京都町田市、蛯谷梨枝さん(39)は「私の世代が読んでも、知らないはずの戦争の時代を生きることへの必死さに引き込まれた」。

     投書も女性が多かったのですが、男性の宮尾派も。新潟市、早川和雄さん(61)は、新潟の蔵元を舞台にした『くら』(中公文庫)を推薦。「壮絶な女性の一代記に勇気と感動をもらった。家や女性という束縛も、失明という障害もものともせず生きたヒロインの姿から、宮尾さんのメッセージを受け取った」

     みやお・とみこ 1926~2014年。高知市生まれ。結婚後、満州(現中国東北部)へ渡り、46年帰郷。62年「連」で婦人公論女流新人賞。9年をかけた『櫂』で73年、太宰治賞を受賞しプロの作家に。77年『寒椿』で女流文学賞、79年、『一絃の琴』で直木賞。83年『序の舞』で吉川英治文学賞。2008年、菊池寛賞。09年、文化功労者。10年、『錦』で親鸞賞。

    映画・ドラマ化多数

     二人の小説を原作に、名優の演技が強烈な印象を残した映画やテレビドラマは多い。山崎作品では、度々映像化された『白い巨塔』の中でも、78、79年に田宮二郎が、2003、04年に唐沢寿明が主役の財前五郎を演じたフジテレビ系のドラマが著名。1995年に日中合作で作られたNHKの「大地の子」も、感動を呼んだ。宮尾作品では、夏目雅子の「なめたらいかんぜよ」というタンカが流行語になった1982年の「鬼龍院花子の生涯」(五社英雄監督)のほか、松たか子がヒロインを演じた1995年のNHK―BS「藏」、宮崎あおい主演の2008年のNHK大河ドラマ「篤姫あつひめ」が話題に。

    2017年02月08日 05時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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