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    古今の作家を巡って専門家と読者からの感想、意見を紹介します。

    どっち派? 猫の本と犬の本

     全国の「本よみうり堂」愛読者の皆様、ついにやりました! 作家などを対決させてきた企画「どっち派?」は、今回で開始1年。節目の回は、満を持して「犬の本」と「猫の本」の対決です。数多くの投稿をいただき、気分はニャンだか、ワンダフルです!!

    猫の本…優しさを思い出させる

    • (日曜版連載中のそにしけんじ『猫ピッチャー』より)
      (日曜版連載中のそにしけんじ『猫ピッチャー』より)

     「手元に置いて、笑ってほしい。どんな時でも幸せになれる本です。ぜひ猫好きには買っていただきたい」

     神奈川県平塚市の伊藤智子さん(49)が熱く語るのは、町田康さんのフォトエッセー『猫にかまけて』(講談社文庫)。心優しい方が多いからでしょう。猫派の投稿は、どれも思いがこもっています。

     群馬県大泉町の茂木弓子さん(20)は、有川浩『旅猫リポート』(講談社文庫)。「飼い主を大切に思う猫と人の絆に心打たれた。人間関係に疲れたときの処方箋です」

     夏目漱石『吾輩は猫である』や谷崎潤一郎『猫と庄造と二人のおんな』、さらに大佛次郎『猫のいる日々』など、猫が出てくる作品には、数多くの著名なものがあります。

     「小学生のときに犬にさんざんほえられて以来の猫派」と語る群馬県藤岡市の高山委佐美さん(45)が紹介してくださった赤川次郎『三毛猫ホームズの推理』(角川文庫)も、あまりに有名なシリーズ。「これほど鮮やかなトリックに衝撃を受けたことは、前にも後にもありません」

     様々な分野の作品があります。ロバート・A・ハインライン『夏への扉』(ハヤカワ文庫)は、山口県周南市の奥村省司さん(57)から「タイムトラベルがテーマ。猫とSFが好きな方にお勧め」。

     エリン・ハンター『ウォーリアーズ』(小峰書店)は「猫たちの恋愛あり、友情あり、まさに人間世界の縮図」と、宇都宮市の山村栄子さん(48)から。小学校高学年から楽しめるシリーズです。静岡市の竹内久美子さん(56)は、万城目学さんの名作『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(角川文庫)。「義理人情に厚い猫が登場し、心の深さに感動するエピソード満載です」

     優しい気持ちを、思い出させてくれそうです。

    ミー太郎

     ネコ 日本文学には古くから登場。清少納言の『枕草子』は、「なまめかしき物(優美なもの)」として「猫の、あかき頸綱にしろき札つきて(略)」引き歩く姿を挙げる。かつて猫は、綱でつなぐことがあったようだ。紫式部『源氏物語』にも、光源氏の妻に心を寄せる柏木が、思いを遂げられぬ代わりに猫をかわいがる場面がある。同作では鳴き声を「ねうねう」と表記。

    犬の本…人間と心を交わし合う

    • (夕刊連載中の唐沢なをき『オフィス ケン太』より)
      (夕刊連載中の唐沢なをき『オフィス ケン太』より)

     今年は『14歳からの哲学』など柔らかな哲学エッセーで知られた池田晶子さんが没後10年を迎え、各地の書店などでフェアが行われています。

     福岡市の武部自一さん(66)は、池田さんのエッセー集『犬の力を知っていますか?』(毎日新聞出版)を挙げてくださいました。「犬がかわいく、人間にとって掛け替えのない存在であることや、犬と人間との愛、その死後、魂の世界にまで話が広がっている」

     犬が好きな方は、思索的な深い文面の投稿が目立ちます。便箋に飼い犬のパピヨンのシールを貼ってくださった神奈川県横須賀市の佐藤良美さん(64)は、「顔を両手ではさんで見つめたとき、『ああ、この子は広い宇宙でひとりぼっちだ』」と感じたそうです。お薦めは、馳星周『ソウルメイト』(集英社文庫)。「人間と犬が心を交わし合う珠玉の7編」とのことでした。

     犬は実生活だけでなく、文学の上でも人間の心の友。青森県八戸市の奥村武夫さん(59)は、川端康成の『掌の小説』(新潮文庫)の短い一編「愛犬安産」に「犬への深い愛情と現実の出来事との交錯のさせ方に驚きました」。

     茨城県ひたちなか市の山田真理さん(67)の一冊は、S・クイン『助手席のチェット』(創元推理文庫)です。警察犬訓練所をちゃんと卒業し損ねた犬と私立探偵がコンビを組み、「犬が犬らしく描かれたサスペンス」。2月に亡くなった佐藤さとるさんのコロボックルシリーズの『豆つぶほどの小さないぬ』(講談社青い鳥文庫)は、新潟県長岡市の竹股弘美さん(54)からです。

     北九州市の力丸早苗さん(48)は、同じ月に亡くなった谷口ジローさんの漫画『犬を飼う』(小学館文庫)。「かわいいだけでは飼えない現実を、優しい絵と語りで紹介し、心が温かくなってきます」

    ケン太

     イヌ 古くから人間に忠誠を尽くす。日本最古の歌集『万葉集』には、「床敷きて我が待つ君を犬な吠えそね」と詠む歌の一節がある。訪ねてくる人に激しくほえかかるほど、犬は家を守った。その逆恨みか。清少納言『枕草子』では「すさまじき物(興ざめなもの)」に「昼吠ゆる犬」を挙げる。曲亭馬琴『南総里見八犬伝』も有名。かつては、「びよびよ」などと鳴き声を表記。

    短歌や俳句にも名作

     犬や猫は、短歌や俳句にも様々な形で詠まれてきた。作品に親しめば、彼らへの愛情がより深まりそうだ。

     せつない声をあげて相手を求める姿を捉えた「猫の恋」は春の季語。<羽二重はぶたへの膝に飽てや猫の恋 支考>。「猫の子」も、同じく春。<猫の子や親を距離はなれて眠り居る 村上鬼城>。

     犬は、自分の気持ちを人間が託して詠むとき名作が生まれるようだ。<われゑてある日に 細き尾をりて 饑ゑて我を見る犬の面よし 石川啄木>。放浪の自由律俳人も、犬の句を詠んだ。<いつもつながれてほえるほかない犬です 種田山頭火>。(待)

    2017年04月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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