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    古今の作家を巡って専門家と読者からの感想、意見を紹介します。

    どっち派? 海外のファンタジーと日本のファンタジー

     海外と日本に分かれたファンタジー対決。空想の翼を羽ばたかせ夢や幻想にいざなう物語は年代を問わず主に女性をとりこに。児童書、少女小説を含む幅広い分野で愛されているのが分かりました。特に浸っている人が多いのは、広大な異世界や不思議な魔法のお話です。

    海外のファンタジー…崇高 寄り添える普遍性

    • ↑ 『指輪物語』のイメージ(銅版画・高田美苗)
      ↑ 『指輪物語』のイメージ(銅版画・高田美苗)

     誰もが知るJ・K・ローリング「ハリー・ポッター」シリーズ(静山社)が最多でした。魔法魔術学校で新たな生活を始めた少年ハリーの冒険と友情。「全く関心がなかったのに、書店でぱらぱらめくったとたんに魅せられた」と76歳の神奈川県横須賀市、青木恭子さんも全巻読破。東京都昭島市、高橋聖子さん(38)は、「出てくる呪文を単語帳を使い全部覚えようとした」。面白い本を教えてくれる呪文もあったらいいなあ。

     ホビット族のフロドたちが冒険の旅をする現代ファンタジーの原点、J・R・R・トールキン『指輪物語』(評論社文庫)には千葉県八街市やちまたし、宇野香都里さん(51)が「私はいつも、彼らの仲間でいたい。崇高で常に寄り添うこともできる普遍的な物語」と絶賛。前日たんの『ホビットの冒険』(岩波少年文庫など)については大津市の松田翔さん(29)が「就職直後で悩みがあったとき『何のために生きるのか』のヒントを本書から得た」。

     M・エンデ『はてしない物語』(岩波書店)の単行本は、物語の中の本と同じ作りで、「装丁もファンタジーの一部って素晴らしい。35年前に買って今でも宝物です」と堺市の梅田京子さん(60)。

     ここまでは映画も大ヒットした定番。さらに深くという方には、千葉市の小川美恵子さん(62)が、「三十数年前、魔法の世界にどっぷり浸って、海外ファンタジーに目覚めた」というピアズ・アンソニイ『カメレオンの呪文』(ハヤカワ文庫)はいかが。「おじさまおばさまにこそ読んでほしい大人のファンタジー」と仙台市、尾形まゆみさん(45)がいう「死者の短剣」シリーズなどL・M・ビジョルドのファンタジーも推薦が目立ちましたが、現在入手が難しそう。だれか復刊の呪文を知りませんか?

     指輪物語 英国のトールキンが20世紀半ばに執筆。「旅の仲間」「二つの塔」「王の帰還」からなる三部作。妖精や魔法に満ちた「中つミドルアース」という別世界で小柄なホビット族のフロドが魔力を持つ指輪を破壊するための旅をする。1960年代の再評価以降、ゲームなどのサブカルチャーにも影響を与え、2001~03年に「ロード・オブ・ザ・リング」として映画化された。

    日本のファンタジー…魅力的人物 壮大な物語

    • ↑ 『十二国記』のイメージ(銅版画・高田美苗)
      ↑ 『十二国記』のイメージ(銅版画・高田美苗)

     「ファンタジーは若い読者には希望や勇気を、人生の半分を生きた私たちには、明日への活力となる愛を与えてくれる」。そう語る福岡市の坂本瞳さん(58)は上橋菜穂子作品は全て読破しているそう。その中でも「り人」シリーズ(新潮文庫)が大人気でした。文化人類学者でもある著者が描くリアルな世界に川崎市の千葉路世さん(52)は、「主人公バルサが旅する山河や暮らしを知っている気がする。子どもの頃想像した異世界がやっぱりあったんだと」と感嘆。

     麒麟きりんが王を選ぶ中国風異世界が舞台の小野不由美「十二国記」シリーズ(同など)も支持多数。「王様も脇役も悩み、難しい決断を迫られる。登場人物がみな魅力的」と千葉県船橋市の五木田路子さん(40)。同じように少女向けから大人へ広がったファンタジーは多く、茅田砂胡かやたすなこ「デルフィニア戦記」(中公文庫)は「18巻の大作ですが、登場人物たちと泣いたり笑ったり全く飽きない」と神戸市の沢田智子さん(61)が推します。

     「豹頭ひょうとうの戦士が活躍する冒険に闘い、恋愛とあらゆることが起きる。壮大な物語に出会ってから約30年間楽しんだ」と千葉県館山市、小栗みさ江さん(56)が推薦する「グイン・サーガ」(ハヤカワ文庫)はもっと長大。栗本薫さんの死後も他の作家に引き継がれ、現在正伝だけで140巻を超えました。

     一方、かつて王道の異世界ものを読みふけった大阪府吹田市、和田幸子さん(35)は最近、日常と不思議が溶け合う村山早紀「コンビニたそがれ堂」(ポプラ社)や香月日輪「妖怪アパートの幽雅な日常」(講談社文庫)の両シリーズがお気に入り。「世界はめまぐるしく変わらないけれど、心にじわっと響いてきてオススメです」と和んでいます。

     和製ファンタジー 『指輪物語』などの西洋ファンタジーは、北欧神話的世界がベースにあるが、1980年代末頃から、古事記を基にした『空色勾玉まがたま』などの荻原規子「勾玉」シリーズや上橋菜穂子作品など、日本的ファンタジーが登場。現在は、『からすひとえは似合わない』に始まる阿部智里「八咫(やた)烏」シリーズなども人気だ。

    作品解説 タイプ別に

     このジャンルのガイドで入手可能なものでは、石堂藍『ファンタジー・ブックガイド』(国書刊行会、2003年刊)がオススメ。<遥かな異世界と神話的世界>(『指輪物語』『ゲド戦記』など)、<とびらのむこうは別世界>(『ナルニア国ものがたり』『十二国記』など)という風にタイプ別にまとめた国内外作の作品解説が充実。「異世界」「剣と魔法」など、キーワードの解説も。古書や図書館での利用になりますが、小谷真理『星のカギ、魔法の小箱』はファンタジーとSFの子ども向けブックガイドで、語りかけるような解説と版画の挿絵が楽しいですよ。(佐)

    2017年10月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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