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    古今の作家を巡って専門家と読者からの感想、意見を紹介します。

    どっち派? 石ノ森章太郎と藤子・F・不二雄

     戦後のマンガ文化を育てた2人の対決は、児童マンガ中心に「すこしふしぎ」な世界を創造した藤子・F・不二雄が幅広い世代の支持を集め、「萬画まんが」という言葉で多様なテーマを表現した石ノ森章太郎には、ヒーロー好き世代の熱い思いが目立ちました。

    石ノ森章太郎…戦士の個性詩的な世界

    • 1997年撮影
      1997年撮影

     「石ノ森先生の描くヒーローが今も大好き」という山口県周南市、奥村省司さん(57)のような50代中心に熱気あふれる投書が多く届きました。「単なる勧善懲悪のヒーローでないのがいい。『仮面ライダー』(中公文庫)は、人間から改造された自分の運命にもがきながら美しく戦う姿に涙を流した」

     9人のサイボーグ戦士の個性にひかれると『サイボーグ009』(秋田書店)を推すのは千葉県松戸市、藤村龍哉さん(59)。ベトナム戦争の部分では「小学生にして戦争の愚かさを教えられた。死ぬまで読み返していく」。やはり社会的問題への目を開かせてくれたという埼玉県北本市、斉藤正敏さん(51)は、中学生のとき、主人公・島村ジョーの憂いに満ちた目をまねし、「周囲に『暗すぎる』と言われたのもいい思い出」とか。

     大人向けでは『佐武と市捕物控』(宝島社)について、福島県会津若松市、満田信也さん(65)が「江戸情緒を丁寧に描き、市井に生きる庶民への優しいまなざしや仕込みづえの剣技のえを、毎回楽しみにしていた」。大ホテルが舞台の『HOTEL』(主婦の友社)には、元ホテルマンの新潟市、早川和雄さん(62)が、「東堂マネジャーらのお客さんの満足を考える接客術に、拍手喝采を送った自分の人生の指南書」といいます。

     少女マンガの『さるとびエッちゃん』(『おかしなおかしなおかしなあの子』)には、東京都府中市、桑田薫さん(53)は「小さいのに運動神経がすごいエッちゃんが時々寂しそうにする姿に小学生の私はじーんときた」。せりふを排した実験作『ジュン』(ポット出版)にも複数推薦があり、大阪府泉南市、満寿川修さん(52)は「画力とストーリーだけで読ませる詩的世界」に魅せられました。

     いしのもり・しょうたろう 1938~98年。宮城県石森町(現・登米市)生まれ。本名・小野寺章太郎。54年、石森章太郎名で『二級天使』でデビュー。56年上京し、「トキワ荘」に入居。『サイボーグ009』『仮面ライダー』『佐武と市捕物控』などを生み、特撮やアニメでも活躍。86年石ノ森に改名。『マンガ日本経済入門』もヒットした。

    藤子・F・不二雄…子供に夢懐かしい風景

    • 1991年撮影
      1991年撮影

     推薦の大半を占めたのは、国民的マンガとなった『ドラえもん』(小学館)。「たくさんの道具が出てきてたくさん夢をかなえてくれるから」と神戸市の9歳の男の子からのかわいいお手紙も届きました。「今は大学で法律を教える43歳の息子が2歳から愛読した宝物。信頼しあえる友達とへこたれつつ困難を乗り越えていく大切さを彼は教わった」と富山県高岡市、野沢伸子さん(69)。誕生から約半世紀。子どもたちに夢を与え続けてきたのが分かります。「『どこでもドア』『暗記パン』など、大人になった今でも欲しいと思う」という佐賀県鳥栖市、大川加奈美さん(48)の意見にも納得です。

     藤子・Fさんの描く昭和の郊外の風景は、『オバケのQ太郎』(合作)、『パーマン』、『キテレツ大百科』(全て小学館)も含め、どこか懐かしい。「作中の放課後の風景が、学校から帰って自然と外で誰かと遊んでいた小学生の頃と重なる。なんて幸せでキラキラしていたのか」という埼玉県川口市、高岸信子さん(48)は、アニメから生まれた「オバQ音頭」を盆踊りで友達と踊ったそう。そういえば、この曲、長く夏の風物詩で、作家・藤沢周平のエッセーでも毎年、盆踊りにかかる不思議を思う場面があります。『オバQ』は、「日常生活にかわいいオバケが溶け込み、Q太郎だけ化けられないのも面白い」と新潟市、熊谷圭朗さん(28)が一押しです。

     SF短編の名手としての評価も目立ちました。東京都江東区の加藤三葉さん(45)は、主人公が6000年かけ到着した移民星で意外な事実を知る「老年期の終わり」(藤子・F・不二雄SF短篇たんぺん集1=中公文庫=収録)が永遠のベスト1。「ラストは未来への希望に満ちあふれ、何度読んでも読み飽きない」

     ふじこ・えふ・ふじお 1933~96年。富山県高岡市生まれ。本名・藤本弘。小学生時代の同級生、安孫子素雄さん(藤子不二雄(A))とコンビを組み、51年『天使の玉ちゃん』でデビュー。53年頃から藤子不二雄のコンビ名に。54年上京し「トキワ荘」に入居。『ドラえもん』『パーマン』など児童マンガの名作を生みだす。87年にコンビを解消、各自のペンネームを名乗った。

    ゆかりの地に展示施設

     藤子・Fがトキワ荘を出た後暮らした川崎市多摩区にある「藤子・F・不二雄ミュージアム」は、約5万点の原画を保存し、「ドラえもん」などの世界を紹介する。日時指定による予約制。故郷の富山県高岡市には、「藤子・F・不二雄ふるさとギャラリー」が2015年にオープンした。

     一方、仮面ライダーなどのキャラクターに会える「石ノ森萬画館」は、ゆかりの地、宮城県石巻市に立つ。東日本大震災で津波被害を受けたが、原画などは無事で12年に再開した。同県登米市の生家近くには、トキワ荘の部屋などを再現した「石ノ森章太郎ふるさと記念館」がある。(佐)

    2018年03月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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