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    長く読み継がれてきたおすすめの文庫を紹介します。

    『介護はつらいよ』 大島一洋著

     「平凡パンチ」「鳩よ!」などの編集をした著者は定年退職後、93歳と88歳の父母を介護するため、東京に妻子を残して田舎に帰った。本書は認知症の母を89歳と7か月で看取みとり、父が101歳6か月で天寿を全うするまでを描く。介護ストレスで酒におぼれたり、白内障の手術をしたりと壮絶だが、若き日の不倫や介護のかたわらでAVを楽しむ姿も隠さず、あっけらかんと明るい老老介護の実録である。

     記録魔で、両親の日々の発言から介護費用まで事細かに記し、嵐山光三郎さんの解説文「泣けます、笑えます、役に立ちます」は至言である。

     歌人の父は〈長男が「大便出たか」と朝々聞く素直に答ふ吾も九十三歳〉という歌を残し、母も〈はじめよりお互い反発したりきて五十年はよくぞ続きし〉と歌った。弟の歌人、大島史洋しようは〈認知症の母が死にたいと言いしときそううまくはゆかぬと言いたる父よ〉を収めた歌集で昨年、●空(ちょうくう)賞(●は、しんにょうに召)を受賞した。言葉を大切にする家族のDNAか、平明な文章からは言葉に尽くせぬ哀歓があふれ出す。(小学館文庫、580円)(鵜)

    2017年09月27日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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