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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『こびとが打ち上げた小さなボール』 チョ・セヒ著

     1970年代のソウルには、スラム街のような住宅密集地域が残っていた。当時の政府は都市計画を進めるため、無許可で建っている住宅を徹底して撤去し、多くの悲劇を生んだ。

     本作は、この時代を舞台にした連作短編集だ。住む場所を奪われ、結局はボロボロになる「こびと」と呼ばれる男がいる。親に恥ずかしくない生き方を望みながら、ままならない生を送る子供たちがいる。知性に恵まれながら社会の矛盾に気づき、幸せになれない人たちがいる。

     急速な経済成長により都市の現代化が進む中で、多くのゆがめられた生がある。それは、韓国だけの話ではないはずだ。78年の刊行後、同国では計130万部に達したこの澄んだ小説は、東アジアの精神的な墓碑でもある。斎藤真理子訳。(河出書房新社、1900円)(待)

    2017年02月22日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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