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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『片翼の折鶴』 浅ノ宮遼著

     患者の症状を把握し筋道を立てて病名を診断する。病院で診察する医師は、手がかりから犯人を突き止める「探偵」と似ている。他の医師が見抜けなかった病を解き明かす、「臨床探偵」こと西丸医師が活躍する連作ミステリーだ。

     がんで余命数か月の妻を、男がなぜか今すぐ殺そうとする謎と緊迫感で読ませる表題作は絶品。治らないはずの脳の病変が消えたり、原因不明の貧血や呼吸困難に向き合ったりと緻密に構成された推理たんはまた、医学の最前線に触れる臨場感にあふれている。

     作者は現役の医師で本作がデビュー作。思いこみを戒めるなど、医者のあるべき姿も伝わってくる。真相を看破した後、称賛する同僚に西丸は言う。自分は探偵ではない。「ただの医者です」と。かっこいいなあ。(東京創元社、1600円)(佐)

    2017年03月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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