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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『お師匠さま、整いました!』 泉ゆたか著

     算術家の夫の残した寺子屋を継ぎ、茅ヶ崎(現神奈川県)で村の子どもを教える桃のもとに両親を亡くした15歳の少女・春が訪ねてくる。もう一度学問をしたいからと。ところが、生意気な生徒・鈴が反発する。

     江戸の世を自立して生きる女性を描きだす小説現代長編新人賞受賞作。教師として優秀すぎる鈴の扱いに悩み、女として幼なじみの大工が寄せる恋心に戸惑いながらも一歩一歩前に進んでゆく姿が温かい。

     珍しいのは、和算をモチーフにしたこと。問題の答えを書かず後世の人に解かせる遺題継承、自分で考えた問題を神社や寺院に奉納した算額。そうした和算の切磋琢磨せっさたくまは、水害を減らす土木工事とも結びついていた。ひたむきな生き方と学問を究めようとする心。二つの純粋さに触れられる。(講談社、1400円)(佐)

    2017年03月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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