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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『さすらいの皇帝ペンギン』 高橋三千綱著

     以前の日本にはもっと熱い男や、むやみに忙しいけれど予定外のことを面白がる男たちがいたと思う。

     『九月の空』で芥川賞を受賞し、多くの作品を執筆する69歳の著者の小説は、体温の高さがただひたすらいとしい。

     借金を抱え、原稿書きなどに追われる小説家の三十郎のもとを、テレビ局の関係者が訪れる。予定を突然キャンセルしたある作家の代わりに、某テレビ局の開局30年記念番組で南極を訪ねてほしいというのだ。途中の経由地では、少女から受け取った皇帝ペンギンのひなを預かり、南極に帰すことにもなった。

     荒れ狂う自然、すさんでゆく人間関係、酒また酒……。荒々しい物語の果てに、冷たく澄んだ雪原が広がる。孤独を知るものだけが人生を燃焼し尽くせることを思い出す。(集英社、1600円)(三)

    2017年05月17日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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