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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『葬られた文部大臣、橋田邦彦』 高橋琢磨著

     名前を聞いても、ぴんと来る人は少ないのではないか。だが、読み進めるうち、ただ者ではないとの驚きに包まれるだろう。

     戦前の生理学者の橋田は、多くの後輩科学者を育てただけではない。旧制一高の校長も務め、テロとファシズムの時代に「科学立国日本」を提唱。近衛・東条内閣では文部大臣にもなったが、学徒出陣に反対し、大臣を辞任した。さらに、科学者なのに、西洋の借り物ではない日本科学の根源を探ろうと、道元の仏教解釈書「正法眼蔵」の研究まで行ったのだ。そのレベルは、極めて高かった。

     戦前エリートのスケールや覚悟の大きさを思う。敗戦にも変節せず、自死したことで忘れられかけていた「知の巨人」。現代に復活させようとした著者の功績をたたえたい。(WAVE出版、1900円)(佑)

    2017年06月14日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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