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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『戦後歌舞伎の精神史』 渡辺保著

     歌舞伎の戦後70年をつぶさに見続けた演劇評論家が、「祖父」(六代目尾上菊五郎ら)から「曾孫ひまご」(市川海老蔵ら)まで六つの時代に区切って、芸の内面の変遷をつまびらかにする。

     前近代に成立した歌舞伎は、近現代において様々な矛盾が露呈した。その矛盾と葛藤し、答えを導き出した役者の列伝として読める。特に「子」の世代の中村吉右衛門、片岡仁左衛門、坂東玉三郎は先人から何を継承し、何を創造して現代歌舞伎の規範を確立させたのか。論考は熱を帯びる。

     時代と闘った役者たちを知った後に読む終章の「歌舞伎とはなにか」の問いかけが重い。著者が説く「目に見えないものを見、聞こえない音を聞く」姿勢は、舞台上の役者だけでなく、彼らを見る観客にも求められていると受け止めた。(講談社、2300円)(達)

    2017年06月21日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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