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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『ボクたちはみんな大人になれなかった』 燃え殻著

     <心の傷ってやつにもいろいろあって、時が癒してくれる傷と><ずっと心の底に居着く傷がある>と主人公のボクは言う。

     この物語は、例えば20歳代の女性読者にとっては、一昔前を舞台にしたロマンチックな恋愛小説と読めるだろう。だが、ボクと同様に90年代に青春を送った男性読者にとっては、<心の底に居着く傷>をいたく刺激する“危ない”作品だ。

     本の内容は、43歳のボクが「自分よりも好き」だったが「こっぴどくフラれた」彼女との日々を思い出すというもの。ナルシシズムに陥るリスクを、著者はボクに関する身も蓋もない描写で絶妙に回避する。

     特定の読者にはかつての自分が思い浮かび、赤面や脂汗なしには読めない本だろう。でも、そんな体験ができる本はきっと貴重だ。(新潮社、1300円)(十)

    2017年10月04日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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