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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『独裁者ですが、なにか?』 荒木源著

     『オケ老人!』など映画化作の多い作家が、文庫書き下ろしで緊急出版した小説のテーマは独裁者。世界の非難も聞かずミサイル実験を繰りかえす独裁国家の頭領同志ジョンウィンは恐怖政治で祖父の代から国民を支配してきた。好奇心から隣国から密輸したAIロボットが彼の命令で亡命中に殺された兄と名乗り……。

     かんに障るAIとの会話にいらだちながら、綱渡り外交の重圧のあまり慰めを見いだすようになるなど、独裁者の孤独への風刺が読ませる。彼を過剰にあがめるアナウンサーや無謀な他国への挑発は悪い冗談のよう。ただ、モデルにしただろう国の「現実」に酷似していることを考えれば、背筋に冷たいものが走る。

     現実の独裁者の行く末は、この小説のようになるのだろうか、それとも?(小学館文庫、510円)(佐)

    2017年10月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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