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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『13・67』 陳浩基著

     日本推理小説界の巨匠の名を冠した「島田荘司推理小説賞」は、中国語のミステリーを対象とした台湾の文学賞。2011年に賞を受けた俊英が、香港警察をめぐる連作短編集に取り組んだ。

     冒頭の短編から驚かされる。「名探偵」と呼ばれる老刑事・クワンは、安楽椅子どころか、病床で昏睡こんすい状態となっており、後輩のロー警部は脳波測定器による意思表示を活用して事件解決に取り組むのだ。この短編の2013年から1967年まで、六つの連作は、時系列を遡りながら進んでいく。ミステリーを通じて、香港の転換期となる時代をいきいきと描く手法は心憎い。

     「忘れるな、警察の本分と使命がなにか」と語るクワン。その信念はどのように形作られたのか。最後に物語が新たな色彩を帯びて見えてくる。天野健太郎訳。(文芸春秋、1850円)(律)

    2017年10月11日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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