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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『カラスヤサトシの日本文学紀行』 カラスヤサトシ著

     エッセーマンガを手がける著者は、相当な日本文学好きらしい。通り一遍の名作案内かと思ったら大間違い。知識量は芥川をしのぐが書くものはつまらないと評された武林無想庵たけばやしむそうあんに、「(おれは)宇宙その物だ!」と叫んで身勝手に生きた岩野泡鳴ほうめい……明治~昭和のマニアックな作家や作品が次々紹介され、近代文学の深遠さに驚くことしきり。

     『樺太の俳句』という本で知った現地の山の正体を知ろうと、林芙美子ふみこの紀行文に沿い戦前の樺太をマンガでたどるなど、著名作家の未読の作品を仮想体験できるのも面白い。著者が昔の文学を愛するのは、作中の些末さまつな描写に失われた暮らしを垣間見る感動からだろう。

     古本を集め本から本へ渡る著者の熱心さに感化されそうで、少し怖くもある。(講談社、1200円)(佐)

    2017年10月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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