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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『はじめての暗渠散歩』 本田創ほか著

     街中を歩いていると時折、妙に蛇行しているなど違和感のある道に出くわす。それは、かつての川や水路に蓋をしたりした「暗渠」かもしれない。土地の記憶を刻む「失われた川の痕跡」の魅力を4人の暗渠通が語る。

     道沿いに銭湯が多いのも、排水の便と関連する暗渠サインの一つという。車止めや家から突き出たパイプ、あるいは欄干だけ残った橋。そうした暗渠の印はどこか寂しげ。『三四郎』『●東綺譚ぼくとうきだん(●=さんずいに墨)』など文学作品に登場する失われた川を探せば、男女の情愛やいにしえの町が目に見えるようだ。

     東京の暗渠が中心だが、横浜、神戸、大阪などにも足を延ばし、「川」と土地の歴史を情感豊かに掘り起こしてゆく。入門書以上の価値がある文庫オリジナルの好著。(ちくま文庫、760円)(佐)

    2017年12月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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