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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『おいしい記憶』 山本一力ほか著

     食は記憶を呼び覚ます。くも膜下出血の後遺症で好物の名前が出てこなくなった女性は、夫が病院に持参した器を開けた瞬間、言葉を取り戻した。「キュウリだ!」。倒れるまで大事にしていたぬか床を、夫が引き継いでくれていた。

     キッコーマン「あなたの『おいしい記憶』をおしえてください。」コンテストの入賞作には、食にまつわる温かなエピソードがつづられる。入賞作10編に加え、審査員の作家・山本一力さんら著名人による書き下ろしを加えた滋味あふれるエッセー集だ。

     だれもがSNSで記憶を共有する時代。でも有名レストランの「インスタ映え」するごちそうばかりが「おいしい記憶」を紡ぐのではない。心のこもった豊かな「食」を、私たちは味わえているだろうか。(中央公論新社、1300円)(松)

    2017年12月27日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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