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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『九十八歳になった私』 橋本治著

     時代は、2046年。元小説家の<私>は、98歳になった。人格的に成熟し、穏やかに枯れた生活を送るのかと思えば、だいぶ違う。

     (つぶやきシローは、まだ若いんだろうか? ヒロシはまだ、どっかで、「ヒロシです、ヒロシです」って言ってるような気がするな)。かなりどうでもよいことを考え、ぼやきながら、東京大震災も生き延びて一人で書き続けている。

     尾崎紅葉の『金色夜叉』を翻案した『黄金夜界』を本紙で連載する著者の新作は、まさかの近未来老人小説だ。永遠の青二才どころか「青中年あおちゅうねん」とでも呼びたい編集者の登場、謎の生き物の出現。ベテラン作家の想像力に思う存分翻弄ほんろうされたい。フラフラになった頭の奥底から、人は何歳になっても生きてゆくのだという希望の感覚も湧いてくる。(講談社、1600円)(待)

    2018年02月07日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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