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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『高座のホームズ』 愛川晶著

     住まいの旧町名から「稲荷町の師匠」と呼ばれた八代目林家正蔵。実在した昭和の落語の名人を「安楽椅子探偵」……いや、「座布団探偵」として登場させたユニークなミステリーだ。

     中編2本からなり、前半の噺家はなしか殺人未遂事件は「天災」と「初天神」、後半で若手噺家が女難に見舞われる一件は「写真の仇討あだうち」と「浮世床」。落語の筋と物語が絶妙にリンクしていく。

     長屋から一歩も出ないまま、鮮やかな推理を披露する稲荷町の師匠。読み込むうちに、よく弟子の林家木久扇が「ば~か~や~ろ~」と物まねをする、独特の震える声が聞こえてきた。

     巻末には正蔵の最後の弟子、林家正雀の寄稿も掲載。そこで明かされた律義で実直な人柄も、小説で描かれた人物像にピタリと重なる。(中公文庫、680円)(達)

    2018年04月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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