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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『日本のムラージュ』 石原あえか著、大西成明写真

     ムラージュとは、ろうでできた医学模型標本。主に20世紀前半、皮膚科などで患部の様子を記録するために作られたものだ。

     石こうで患者から直接型を取り、実物そっくりの彩色や質感が施された。管理の難しさや写真技術の発展につれて廃棄され、わずかに現存するものも、修復の見込みがないという。著者は、標本づくりの職人・ムラージュ師にも注目、その歴史を丹念に掘り起こした。

     天然痘や梅毒、多くの皮膚疾患。キノコや寄生虫。あまりのリアルさに目を背けたくなると同時に、患者の悲しみや憤まんも迫ってきて目が離せない。本書がなければ、日本のムラージュは全て廃棄され、永遠に忘れ去られていたかもしれない。近代の医学と、病に苦しんだ人々の姿を、詳細に記録した意義は大きい。(青弓社、3600円)(佑)

    2018年04月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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