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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『いのりの海へ』 渡辺憲司著

     旅に出るきっかけの一つに、優れた紀行文との出会いがある。本書も間違いなく、そんな一冊だ。

     東海道を歩き、ローカル線に乗り、歴史や文学ゆかりの場所を訪ねる。うわべをなぞるだけではない。江田島や水俣、浪江。痛みを感じる海辺にも足を運ぶ。

     著者は江戸文学研究者。立教新座中学高校の校長だった2011年3月、東日本大震災の影響で卒業式が中止になり、ホームページに掲載した卒業生への祝辞「時に海を見よ」がネット上で大きな感動を呼んだ。

     本書は、それ以前に書いた雑誌連載を中心にまとめられた。連載が自信となり祝辞は生まれたという。後書きに「悲しみを伝えることもいのりなのではないでしょうか」とある。人生を深めてくれるような、大人の旅をしたくなる。(婦人之友社、1500円)(松)

    2018年05月02日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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