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    読売新聞の書評担当記者が選ぶおすすめの1冊です。

    『帰る家もなく』 与那原恵著

     沖縄出身の両親を持ち、東京で育った『首里城への坂道』などで知られるノンフィクション作家の旅のエッセー集だ。沖縄や台湾、韓国をはじめ、訪ねた場所から考えたことや導かれた思い出などをつづる。

     体が弱く、空気の良い場所で生活するため、預けられた房総のT学園の思い出。台湾で盛り上がる「のど自慢」大会。第2次世界大戦と朝鮮戦争の二つの戦争を体験し、現在は90歳を超す画家のペク・ヨンスをソウルに訪ねたこと――。

     両親を早くに亡くし、家族のない著者は、<私に帰る家はないけれど、これから旅する場所はいくらでもある>と書く。旅の時間のように短いエッセーの数々は、胸の中を風のように一瞬通り過ぎ、鮮やかな印象を残し、遠くへ行ってしまうのだ。(ボーダーインク、1800円)(待)

    2018年05月09日 05時25分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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