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    手塚パロディーが話題 プロダクション公式作家につのがいさん

    タッチ酷似 現代絡める

    • つのがいさんの“自画像”
      つのがいさんの“自画像”
    • 足長補正のプリントシール機で遊ぶブラック・ジャックたち (c)つのがい/小学館クリエイティブ(c)『ブラック・ジャック』TEZUKA PRODUCTIONS
      足長補正のプリントシール機で遊ぶブラック・ジャックたち (c)つのがい/小学館クリエイティブ(c)『ブラック・ジャック』TEZUKA PRODUCTIONS

     「マンガの神様」手塚治虫の画風をまねたパロディー作品をツイッターに投稿したところ、大きな反響を呼び、手塚プロダクションの公式作家になってしまった新人がいる。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)から突如現れた謎のマンガ家、つのがいさんに話を聞いた。

     ペンを持って、まだ2年足らず。それまでマンガにあまり触れていなかったというつのがいさん。「今の状況がまだ信じられない。目が覚めたらウソなんじゃないかと」。本人も戸惑いを隠せない。浜松市出身の20代。高校を卒業後、アルバイトをしていたが、過酷な勤務に給与未払いなどが重なり退職。心身ともにボロボロだった2015年6月頃、ブラリと訪れた文具店で目に入ったのがマンガを描くのに使う「つけペン」だった。

     「マンガが描けたら一発芸になるかも」と工場勤務の合間に描き始めた。手塚作品を選んだのは「年齢が上の人でも分かりやすいから」。特に詳しいわけではなかった。

     しかし、そこからの探求心が並外れていた。絵柄だけでなく、独特の手書き文字や経年感を出すためのシミなどを再現する一方、ストーリーにはプリントシール機の補正機能や無料通話アプリ「LINE」など、現代的な題材をあえて絡めた。「手塚作品と区別するため。その時代にはなかったものを入れることで、トレース(敷き写し)ではない証明になるかなと」。ツイッターに作品を投稿すると瞬く間に話題となった。

     評判は手塚プロダクション取締役で、治虫の長女るみ子さんの耳にも入った。プロダクションでは治虫の死後、元アシスタントなどが作画を担当してきていたが、高齢化に伴い、若い描き手の育成が課題となっていた。るみ子さんは、つのがいさんと実際に会い、タッチがあまりに治虫と似ているのに驚いたという。「ここまで描けるんだから、うちの仕事をやってもらう方向にできないかと思った」とるみ子さんは振り返る。

     16年8月に公式の作画ブレーンとなってからは、手塚タッチの初音ミク、ロックバンド「BUCK―TICK」のグッズイラストなどを担当。今年1月にツイッターの投稿などをまとめた『♯こんなブラック・ジャックはイヤだ』(小学館クリエイティブ)を出版すると、品切れとなる書店も続出。3刷4万部のヒットとなっている。

     3月11日に手塚治虫記念館で開催されたるみ子さんとのトークショーでは、その場で描いてみせる「ライブドローイング」も披露した。頭と服の袖の膨らみにあたる円を三つざっくりと描いて、『リボンの騎士』のサファイアを描き始めるのには、「父と同じ描き方」とるみ子さんもびっくり。「手塚タッチには『画数』があるんです」と独特の言い回しで表現するつのがいさんのペンの動きには迷いがなく、ザッザッと音が聞こえるようで、その瞬間、確かに「神」が降臨したように思えた。

     今春から本格的に活動を始めるつのがいさん。「将来的に作家としてオリジナル作品を描きたい。許されれば手塚タッチで」と話す。自分のタッチについては、「考えたことはない」と謙虚な姿勢を見せる。

     手塚作品に親しんだ世代には「今、手塚がいたら」と夢を見させ、若い世代には手塚作品を知るきっかけとなる。SNS時代ならではのサクセスストーリーの行方に今後も注目したい。

    田中圭一さんのうつ病巡る作品も

     手塚タッチでは、ギャグマンガ家の田中圭一さんも有名だ。1月に刊行された『うつヌケ』(KADOKAWA)は自身を含むうつ病からの脱出エピソードを描き、話題となった。

     治虫の作品をベースとしたものでは、『ヤング ブラック・ジャック』が「ヤングチャンピオン」で連載中のほか、鉄腕アトム誕生までの話『アトム ザ・ビギニング』が4月からアニメ化される。没後30年近くたつ今も、治虫は存在感を放っている。(小間井藍子)

    2017年04月06日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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