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    出版大手 デジタル本格化

    作画アプリ無料提供、新たな発表の場

     高機能な作画アプリを無料提供したり、新たな発表の場を作ったりと、デジタルを利用したマンガ大手各社の取り組みが本格化している。国内だけでなく、海外からも才能を発掘しようという狙いも共通する。これらの動きは、紙媒体が中心だったマンガの世界を大きく変える可能性を秘めている。

    50万ダウンロード

    • 「ジャンプPAINT」では、人気マンガ家の作品を参考にしながらスマートフォンでもマンガが描ける
      「ジャンプPAINT」では、人気マンガ家の作品を参考にしながらスマートフォンでもマンガが描ける

     集英社「週刊少年ジャンプ」の公式作画アプリ「ジャンプPAINT」が反響を呼んでいる。スマートフォンやタブレットなどでマンガを描くことができるツールで、6月から無料配信を始め、現在までに50万ダウンロードを突破した。

     「ONE PIECE」の尾田栄一郎さんらジャンプ連載作家のノウハウを学びながら、ネーム(コマ割り構成)の切り方からペン入れまで練習できるのが売り。このアプリだけで自分のオリジナル作品を完成させることができ、ペンの種類は120種類以上、トーン素材も1000種類以上が使用可能だ。

     マンガ作画アプリ(ソフト)は他にもあるが、多くが有料。これだけ高機能なツールを無料で提供するのはかなり思い切ったことだ。

    海外の才能も発掘

    中高生でも気軽に

     「編集者は新人マンガ家との出会いを常に求めている」と、アプリ開発に関わった「少年ジャンプ」編集部の籾山もみやま悠太さん。一昔前は、プロになるには、紙の原稿を編集部へ直接持ち込むか、新人賞に応募するしかなかった。しかし、高性能なパソコンや作画ツールの普及と共に、デジタルで作画する人が増え、同時にデジタルでの投稿の場も増えた。

     「アナログで描くには、ある程度道具をそろえなければならないが、ジャンプPAINTを使えば無料ですぐ描ける。中高生でも気軽に挑戦してもらえる」

     籾山さんが担当するWEBマンガ投稿・公開サイト「少年ジャンプルーキー」に簡単に投稿できる利点もある。

     このアプリのベースとなった「メディバンPAINT」も無料配布されており、開発元のメディバン社によると、会員登録者370万人のうち、7割が海外ユーザーだという。「それが今回、メディバンと組んだ大きな理由の一つ」と籾山さん。「海外在住の新人が紙の原稿で日本デビューするのは難しいが、デジタルならチャレンジしやすいからです」

    オープンな媒体

     ライバル社も黙っていない。講談社は9月、世界最大級のイラスト投稿SNS「ピクシブ」と組み、新アプリを開発すると発表した。

     「私たちは『描く』手段ではなく、発表の『場所』を増やしたい」と、プロジェクトを率いる中里郁子・なかよし・ARIA・エッジ編集部部長。来年リリースする新アプリは、「ジャンルを問わず描き手が活躍できるオープンな発表媒体」になる予定。読者が好きな作品を応援できるシステムも導入する。「ユーザーがアプリを育てる仕組みにしたい。デジタルでも描き手が利益を得られる新しいビジネスモデルを作りたい」

     デジタルの発表媒体としては、小学館が2014年から運営する「マンガワン」もある。まず1話目を投稿し、読者の支持を得られれば2話目が投稿できる「連載投稿トーナメント」が人気だ。マンガワン編集部の和田裕樹・副編集長は「最初から連載形式でチャレンジできるのがうちの強み。メガヒットを出すのが目標」と語る。

     すでにプロマンガ家の半分が、何らかの形でデジタルツールを利用しているという。各社とも「アナログで描く人がいなくなることは絶対にない」と強調するが、マンガがデジタル時代の新たな局面に入りつつあることは確かなようだ。(川床弥生)

    2017年11月09日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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