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    『ACCA13区監察課』オノ・ナツメ

    コマ割り巧み 映画のよう

    • 主人公「もらいタバコのジーン」(右端)が、13の自治区の視察を行う中で、徐々に陰謀に巻き込まれていく (c)Natsume Ono/SQUARE ENIX
      主人公「もらいタバコのジーン」(右端)が、13の自治区の視察を行う中で、徐々に陰謀に巻き込まれていく (c)Natsume Ono/SQUARE ENIX

     架空の国の中で進行するクーデターの陰謀に、たばこをくゆらせる、ひょうひょうとした主人公が巻き込まれる姿をスタイリッシュに描いた「ACCAアッカ13区監察課」(スクウェア・エニックス)が、来月25日発売の単行本2作で、シリーズの完結を迎える。映画のような独特な世界観の物語はどうやって生まれたのか。作者のオノ・ナツメさんに作品への思いを聞いた。(川床弥生)

    来月発売の単行本でシリーズ完結

     2013年6月から16年10月まで月刊ビッグガンガンで本編(全6巻)が連載され、同12月から先月まで番外編の「P.S.」(全2巻)が連載された。「ACCAとしてはこれで一区切り。無事に描き終えられたことをほっとしています」と今の心境を語る。

     舞台は13の自治区からなるドーワー王国。主人公のジーン・オータスは、警察、消防、医療などを管轄する巨大組織「ACCA」の監察課の副課長。各自治区の支部の業務を視察しに行くのだが、クーデター計画への関与を疑われ、ひそかに監視される。

    主人公はかっこよく

    • 今回描き下ろしの自画像
      今回描き下ろしの自画像

     物語で重要な役割を果たしているのが、たばこだ。王国では高級品。めったに手に入らないのにジーンの手にはいつもたばこ。「もらいタバコのジーン」という異名までつく。「たばこをテーマに以前、アンソロジーで描いた設定を生かしました」と振り返る。

     ジーンは自治区を巡る中で、身に覚えのないクーデターへの協力の証しとして、各地の区長らからたばこを贈られることになる。ジーンとは一体何者で、監視役の真の目的は何かなど、サスペンスの要素を盛り込みながらも、主人公がたばこを手に思いを巡らす場面など、セリフのないコマを巧みに盛り込み、読者がまるで映画を見ているかのような気分にさせる。

     「若い頃、よく海外ドラマを見ていたので、その影響があると思います。主人公はかっこいいキャラクターにする、というのがありました」

    キャラ細かく決めず

     ジーンの周囲には、妹のロッタ、幼なじみのニーノ、ジーンが憧れるモーヴ本部長、ACCAの「5長官」のうちの一人・グロッシュラー長官など、魅力的なキャラが多数登場するが、どのキャラもあまり細かな設定を決めずに描き始めたという。「ジーンがこういう行動をとるならニーノはこう返すみたいな感じで、動き始めてやっと性格が見えてきます。今でもキャラのすべてについては分かっていないと思います」と語る。

     おやつを食べるシーンも多く描かれ、ほっこりできるのも魅力の一つ。主人公が通う食パン専門店「ムギマキ」はオノさんの願望が反映されているとか。「パンが好きなので種類の豊富さと、自分の好みの厚さで切ってくれるお店があったらいいなぁと」

     来月25日発売の2冊のうち、「P.S.」2巻は監察課の人々の視点で、本編の裏側を描いた。もう1冊の外伝「ポーラとミシェル」は、初の描き下ろし単行本で、5長官の一人・パイン長官の娘らの物語だ。

     ほかに連載を抱えての執筆だったため、始めた頃は不安だったという。「今回描き下ろしをやり切ったことで、時間はいくらでも作れると、自信になりました」。現在は「レディ&オールドマン」(集英社)、「ハヴ・ア・グレイト・サンデー」(講談社、12月21日に1巻発売)が連載中だ。

     「ACCAで何を得たかは次の作品で生かせた時に初めて気づくのだと思います。その時その時で、“やりたい”と思った気持ちを大切に、描きたいと強く思った物語を形にしていきたいです」

    2017年12月07日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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