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    【回顧2017】マンガ 本年のベスト3作品を選ぶ

    • 連載20周年を迎えた『ONE PIECE』(集英社)の勢い衰えず。連載開始の7月22日が「記念日」に制定され、ハリウッドでの実写ドラマ化も発表された(7月21日、東京都港区の東京ワンピースタワーで)
      連載20周年を迎えた『ONE PIECE』(集英社)の勢い衰えず。連載開始の7月22日が「記念日」に制定され、ハリウッドでの実写ドラマ化も発表された(7月21日、東京都港区の東京ワンピースタワーで)

     市場としては苦戦が続いているが、今年も多種多様な話題作が生み出されたマンガ界。編集者の斎藤宣彦さんと京都国際マンガミュージアム研究員の倉持佳代子さんに、それぞれのベスト3作を挙げ、この1年を振り返ってもらった。あわせて編集部のベスト3作もお届けする。

    新人離れした話題作…斎藤宣彦さん(編集者)

     集英社「週刊少年ジャンプ」の発行部数が200万部を割り込んだと報道されたのが5月。出版界がデジタルへのシフトを模索する中、違法データを公開する海賊版サイトの摘発もあった。この12月には小学館「コロコロコミック」2018年1月号が2年ぶりに100万部突破。マンガは児童にとって「本の世界」への入り口でもあるので、これは明るいニュースだ。

     3位の『映画大好きポンポさん』は、少女にして映画プロデューサーであるポンポさんが活躍。新人の女優や監督と出会い、彼らの才能を引き出して映画界最高の賞を狙う、ぐいぐい読ませる痛快作だ。アニメ製作会社に勤務する作者が頓挫した企画を自らマンガ化、投稿サイトで人気を得て書籍化され、アニメ化も進行中だという。アニメ・マンガ・ネットが緊密に結びついたあたり、現代風である。

     2位の『甘木唯子のツノと愛』は現役アニメーション作家のマンガデビュー作を含む短篇たんぺん集。筆致・構図・コマ使いのずば抜けたうまさを堪能したい。特に表題作は、少女の「ツノ」に絵と話がフォーカスしてゆく、めくるめく様に圧倒される。

     1位『BEASTARS』も新人離れした上手うまさの話題作。既刊6巻、読み時である。肉食獣と草食獣が共存する世界の学園ドラマというひねった設定。擬人化された動物たちの、恋愛感情と肉食本能が交錯するスリリングな昂揚こうよう感。この異様な密度で週刊連載なのだから驚く。

     活字の本では、『がきデカ』の山上たつひこの自伝『大阪弁の犬』(フリースタイル)が、人気作家の苦悩と栄光を赤裸々に描き圧巻だった。

    • 板垣巴留『BEASTARS』(秋田書店)
      板垣巴留『BEASTARS』(秋田書店)
    • 久野遥子『甘木唯子のツノと愛』(KADOKAWA)
      久野遥子『甘木唯子のツノと愛』(KADOKAWA)
    • 杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』(KADOKAWA)
      杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』(KADOKAWA)

    〈1〉板垣巴留ぱる『BEASTARS』(秋田書店)
    〈2〉久野遥子『甘木唯子ゆいこのツノと愛』(KADOKAWA)
    〈3〉杉谷庄吾【人間プラモ】『映画大好きポンポさん』(KADOKAWA)

    50年経て初の単行本…倉持佳代子さん(京都国際マンガミュージアム研究員)

     今年の少女マンガは、田村由美の『7SEEDS』、椎名軽穂の『君に届け』など、人気長期連載が軒並み完結を迎えたことは一大トピックであった。いずれも納得の大団円。心地よい読後だった。

     時代を経てよみがえった作品も多数だ。萩尾望都の『ポーの一族~春の夢』は約40年ぶりに刊行された新作。新旧ファンを熱狂させた。また、1970年代の学年誌で活躍し、バレエマンガのシリーズで一世を風靡ふうびした谷ゆき子の『バレエ星』は、約50年の時を経て初の単行本化を果たした。谷の作品は原画が残っていないため、復刻本の出版が難しいとされていたが、雑誌コピーから完全再現へ。学年誌の一記録としても谷の功績を見直す意味でも快挙だ。

     エッセイマンガでは、なかなか人には言い出しにくいテーマを真正面から描く秀作が目立った。例えば、「毒親」といかに向き合うかを描くもの、特殊な性癖を語るもの、心と体のバランスを崩した人の奮闘記など……。代表格は、田中圭一の『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』だろう。うつ病体験者による病気からの脱却談を描くもので、同じように悩む人の大きな光となったはずだ。

     ベスト3に上げた他2作、『青野くんに触りたいから死にたい』は死んだ恋人との恋物語。ありきたりのラブコメかと思いきや本格ホラーへ変化していく展開が斬新で今後も注目だ。『大江戸国芳よしづくし』は連作短編ながら、歌川国芳の一代記を見事な筆致で描いた。大拍手を贈りたい。

    • 谷ゆき子『バレエ星』(立東舎)
      谷ゆき子『バレエ星』(立東舎)
    • 椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』(講談社)
      椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』(講談社)
    • 崗田屋愉一『大江戸国芳よしづくし』(日本文芸社)
      崗田屋愉一『大江戸国芳よしづくし』(日本文芸社)

    〈1〉谷ゆき子『バレエ星』(立東舎)
    〈2〉椎名うみ『青野くんに触りたいから死にたい』(講談社)
    〈3〉崗田屋愉一おかだやゆいち『大江戸国芳よしづくし』(日本文芸社)

    スリルと謎 繊細な絵で…編集部

     『約束のネバーランド』は、雑誌ランキングなどでも高評価で、やはり今年外せない一作。孤児のための施設で優しい“ママ”と幸せに暮らす子どもたち。しかし、楽園に見えた施設は巧妙な監獄で、子どもたちは、ある年齢に達すると鬼の「食料」として出荷される運命だった。そのことに気づいた年長の3人、エマ、ノーマン、レイは、恐怖の支配者“ママ”を欺き、施設からの集団脱走を計画するが……。スリルと謎に満ちた物語が、美しく繊細な絵で紡がれ、引き込まれる。

     『ニュクスの角灯ランタン』は、明治の長崎を舞台に、万博が開かれたパリへ「日本工芸の美」を輸出しようともくろむ古道具屋の物語。ジャポニスムがブームとなった今年こそ読むのにぴったり。

     『やれたかも委員会』は、題名から想像もつかない純愛オムニバス作品。誰にも心にしまっておきたい夜がある。形容しがたいムズムズ感を味わってほしい。

    • 白井カイウ作、出水ぽすか画『約束のネバーランド』(集英社)
      白井カイウ作、出水ぽすか画『約束のネバーランド』(集英社)
    • 高浜寛『ニュクスの角灯』(リイド社)
      高浜寛『ニュクスの角灯』(リイド社)
    • 吉田貴司『やれたかも委員会』(双葉社)
      吉田貴司『やれたかも委員会』(双葉社)

    〈1〉白井カイウ作、出水ぽすか画『約束のネバーランド』(集英社)
    〈2〉高浜かん『ニュクスの角灯ランタン』(リイド社)
    〈3〉吉田貴司『やれたかも委員会』(双葉社)

    2018年01月01日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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