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    「マンガで学ぶ」新時代

    ビジネス分野で注目

    • 大人向け学習マンガの数々。各社とも「まんがでわかる」シリーズは、若い女性が仕事に悩みつつ、先輩のアドバイスを受けて成長するストーリーが多い
      大人向け学習マンガの数々。各社とも「まんがでわかる」シリーズは、若い女性が仕事に悩みつつ、先輩のアドバイスを受けて成長するストーリーが多い

     「まんがでわかる――」とタイトルに冠した大人向けの“学習マンガ”が書店をにぎわせている。マンガ好きからは評価されにくいジャンルだが、ストーリー性に学びの機能をプラスしたスタイルは、新たなマンガの可能性を広げるかもしれない。

     ピケティの『21世紀の資本』も、ハラリの『サピエンス全史』も、分厚い活字本で読まなくていい。今やたいがいの名著がマンガ化されていることに驚くばかりだ。今月は中公新書のロングセラーを基にした『まんがでわかる 理科系の作文技術』(原作・木下是雄、作画・久間月慧太郎、中央公論新社)も加わった。

    ポイントは活字

     ブームの発火点は、2013年の『まんがでわかる 7つの習慣』(まんが・小山鹿梨子、監修・フランクリン・コヴィー・ジャパン、宝島社)。ビジネスマンに人気の自己啓発書を、バーテンダーを志す若い女性を主人公にマンガ化し、85万部のヒットになった。

     このシリーズを作った同社編集者、宮下雅子さんは大のマンガ好きだが、マンガ編集の経験はなかった。しかし外部の編集プロダクションに任せず、自分で物語の設定を作り、マンガ家も自分で探した。「まずマンガとして楽しんでもらい、原著にも興味を持ってもらえるようにしたかった」

     各章の間に、活字のまとめと図解を入れたところがポイントだ。「マンガだけでは頭を通り過ぎてしまうが、活字なら理解が深まる。右脳と左脳を両方刺激するような作りにしています」

     以後、各社が競ってこの手法を取り入れ、14~15年にピークを迎えたが、意外なところでは、現在135万部の『漫画 君たちはどう生きるか』(原作・吉野源三郎、漫画・羽賀翔一、マガジンハウス)にも同様の手法が見られるのだ。

    本離れ止めたい

     「まんがでわかる」と同じく、章の間に活字のページがある。コペル君にあてたおじさんの長い手紙だ。100%マンガにしなかったのはなぜなのか、鉄尾(てつお)周一・同社取締役に聞いた。

     「原著で最も重要なメッセージなので、立ち止まって読んでほしかった」と鉄尾さん。ビジネス書の学習マンガブームは知っていたが、「むしろ、学習マンガと呼ばれないものを目指した」とも。しかし、マンガと活字の“いいとこ取り”でベストセラーになったという点では考え方が近い。

     宮下さんも、鉄尾さんも、「本離れの中、どうしたら読まれるかを考えた結果、マンガに行き着いた」と口をそろえる。動物界を描いた『サバイブ 強くなければ、生き残れない』(漫画・麻生羽呂、ダイヤモンド社)というユニークな学習マンガの原作者で大学生の篠原かをりさんは「私の周囲でも、まとまった文字を読む子が減っている。ビジネス書とか哲学書はマンガにした方が広がると思う」。

    教育の場で生かす

     マンガ家で京都精華大学教授のすがやみつるさんは、学習マンガの表現形式による読者の理解度を検証した。その結果、「ストーリー型」は入りやすいが理解度は上がりにくく、文字説明の多い「教授型」は読むスピードは落ちるが理解度は高いとわかった。すがやさんは「理想の学習マンガは、ハイブリッド型の表現が適している」と話す。

     「学習マンガの定義は難しいが、マンガは教育の場でもっと生かせるはず」と語るのは、企画プランナーの山内康裕さん。日本財団が15年から行っているプロジェクト「これも学習マンガだ!」の事務局長を務める。名作マンガの中から、学びの要素を持つマンガを200点選んで小冊子を作り、公共・学校図書館からも大きな反響があった。

     ビジネス界に限らず、教育界でも、マンガの持つ「学びの機能」は、ますます注目されていくだろう。(編集委員 石田汗太)

    2018年02月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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