文字サイズ
    本にまつわる全国、世界各地の最新ニュースをお届けします。

    運命に抗う子供たち

    鬼からの逃走『約束のネバーランド』…原作・白井カイウさん 作画・出水ぽすかさん

    • 出水さんが描くカラーイラストやキャラクターデザインも評判だ。エマ(手前左から2人目)には少年っぽさがあり、鬼(右端)は仮面を身に着けている。西洋絵画や絵本、ゲームなどをヒントにアイデアが生まれるという(C)白井カイウ・出水ぽすか/集英社
      出水さんが描くカラーイラストやキャラクターデザインも評判だ。エマ(手前左から2人目)には少年っぽさがあり、鬼(右端)は仮面を身に着けている。西洋絵画や絵本、ゲームなどをヒントにアイデアが生まれるという(C)白井カイウ・出水ぽすか/集英社

     繊細でかわいらしい絵とタイトルから、ほのぼのとした物語を想像すると、衝撃的な展開に“裏切られる”。鬼の食料として育てられた子供たちが運命にあらがい、脱出を図る『約束のネバーランド』(集英社「週刊少年ジャンプ」で連載中、既刊7巻)が話題となっている。謎に満ち、スリリングで予想がつかない物語はどのように生まれたのか。原作の白井カイウさんと作画の出水ぽすかさんに聞いた。

     11歳のエマは「孤児院」で、同い年のノーマン、レイら40人近い血のつながらない「きょうだい」たちと、育ての母の「ママ」の愛情をたっぷり受けて育つ。だが、孤児院は鬼の食用人間を育てる「農園」で、ママは監視役だった。幸せな日常は一転し、エマたちは優れた頭脳で緻密ちみつな戦略を立て、ママの目を欺き孤児院からの脱出を試みる。

     ほほ笑むママと凍り付いた目のママのギャップには、ゾクッとさせられるが、そのママは、エマたちが脱出した後にこう思うのだった。「ただ普通に愛せたらよかった」「がんばって逃げなさい」。鬼の中にも宗教上の理由から人を食べず、逃走中のエマたちを助ける者もいる。

     「世の中や人間は多面的なんだということを意識しています。大人が思っている以上に子供は大人。少年マンガだからといって、子供向けに手加減したくなかった」と白井さんは語る。

     絵の構図では、子供と大人の対比を浮き上がらせる工夫もされている。「子供の目線で見た世界なので、大人を現実より大きく誇張して描くことで、越えられない壁として表現しています」と出水さん。絵に西洋風のファンタジーの要素を盛り込んだのも「感情移入しやすく、残酷な場面も一歩引いて見られるように」という計算からだという。

     物語は、白井さんが幼い頃に見た「自分が食べられる側だった」という悪夢に着想を得ている。カズオ・イシグロさんの『わたしを離さないで』をほうふつとさせる描写もあるが「実は読んだことがない」。それよりも影響を受けたのは、「ジャンプのある超人気マンガと、浦沢直樹先生の『MONSTER』です」。

     主人公は特殊な能力もない女の子で、心理戦がメイン。「ジャンプらしくない」と言われることもあるが、白井さんは言う。「エマたちの諦めない姿は、私は友情、努力、勝利というジャンプの王道を拾い集めたマンガだと思っています」

     2013年12月に白井さんが300ページに及ぶネーム(コマ割り構成)をジャンプ編集部に持ち込み、担当編集の目に留まった。新人だった上、理想の絵を表現できる人が見つからず、2年あまり作画担当が決まらなかったが、白井さんが出水さんの絵に一目ぼれした。ネームを読んだ出水さんが「面白い」と快諾し、16年8月から連載が始まった。

     2人の息はぴったりだ。出水さんが名付けた主要キャラ以外の子供たちや、鬼の弱点が、白井さんの原作の設定に反映されるなど、相乗効果で物語がどんどん広がっているという。

     死ぬはずだったレイが急に生き残ることになるなど、当初の予定と違った展開になるのも、全力疾走する週刊連載ならではの話だ。

     エマたちの脱出後も、世界の謎、ほかの農園の子供たちとの出会い、鬼との攻防などが読者を引きつけ、秋本治さんや尾田栄一郎さんといった有名マンガ家も絶賛。第63回小学館漫画賞(少年向け部門)などを受賞し、累計発行部数は420万部を突破した。4月4日には8巻も発売される。

     出水さんは「キャラも読者も一緒に成長していける物語を描きたい」と意気込み、白井さんもこう語る。「逆境に打ち勝つため頑張るエマたちが、多くの人の心に刺さる作品にしたい」(川床弥生)

    2018年04月05日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク