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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『アイデアは敵の中にある』 根津孝太さん

    創造の源は対話から

     赤い髪の下には、人懐っこい柔和な笑み。

     取材場所に現れた注目のプロダクト(製品)デザイナーは、デザインを担当した大型電動バイク「zecOO(ゼクウ)」を紹介してくれた。車体は美しいカーブを描き、近未来を舞台にした物語に登場しそうだ。これこそが、本書を象徴する商品だという。

     「大手メーカーが市販化していないものを、小さなデザイン会社と街のバイクメーカーだけで作り上げた。意見をぶつけ合い、能力を100%出し合った結果です」。時には対立することもあったが、議論を深めることで解決策を導き出していった。その手法を「クリエイティヴ・コミュニケーション」と名付け、創造の源は他者との対話だと説く。

     トヨタ自動車で車体のデザインを手掛け、独立後はサーモスのステンレスマグでグッドデザイン賞に選ばれた経歴を持つ。だが、成功の陰に数多あまたの失敗があり、かつては「敵」も作った。試行錯誤の中で学んだ知恵が、本書に詰まっている。

     「最終目標はいいものを作ることで、相手を言い負かすことではない。敵だと見なしていた人を助言者だと思えたら気持ちが楽になるし、新しいアイデアが生まれてくる」。胸襟を開き、「感じて、考えて、動く」と一つ一つの出会いがいとおしくなるという。

     クリエイティヴ・コミュニケーションの活用範囲は幅広い。例えば、本書の執筆。信頼を寄せる2人の編集者と妻の里美さんによるチームで、数十時間の話し合いを重ねて内容を決めた。「最も創造的なのは互いに触発すること」

     現在、小型電気自動車の開発に力を注ぐ。お年寄りの通院や買い物、子供の送迎など、身近な用途を想定している。「物づくりを通して街づくりを考え、人々と連携していきたい」(中央公論新社、1400円)淵上えり子

    2016年11月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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