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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『字が汚い!』 新保信長さん

    自分に気持ち良い文字を

     「うかんむりって、難しいですよね」。写真撮影で透明な板に「字」と手書きしてもらった際、ふと漏らした。小さな頃から文字が下手だった52歳のフリー編集者兼ライターの著者が一念発起し、様々なものに挑戦した。

     「ある漫画家に仕事の手紙を書いていて、あまりに自分の字が子供っぽかった」

     ペン字の練習帳に取り組み、教室に通った。自分宛ての編集者の手紙の字や、著名な作家が残した直筆も見比べた。「練習帳はお手本を見ているときはいいけれど、ないとうまく書けない。教室では怒られることはなく、書いたものを先生が添削し、自分で振り返るのが良かったです」

     1960年代の学生運動の盛んな頃に大学の立て看板を飾った角張った「ゲバ字」や漫画の影響を受けた80年代の「丸文字」、その後の「ヘタウマ文字」など、字形の流行の変遷や背景もたどった。取材を続けるうち、心境は変化していった。

     「筆記用具や教育の規範により、字は変化する。TPOに合わせ、芳名帳を記すようなとき困らないために住所や名前くらいは練習した方がいい。でも、いわゆる楷書の美文字は個性がないとも言える。普段は自分が書いて気持ち良い字をつづるのが大切ではないか」

     字を習って、自分の引き出しが増えた気がしている。

     大阪生まれ。大学卒業後、好きだった漫画を刊行する出版社の試験に軒並み落ち、入社した教育系の出版社を10か月でやめた過去を持つ。雑誌の編集で「24時間営業の店に何時間いられるか」といった企画を手掛けたり、単行本『東大生はなぜ「一応、東大です」と言うのか?』を出したりするなど、ユニークな著述や漫画評論で知られる。

     「これからもいい感じの『隙間』を探したい」(文芸春秋、1300円)待田晋哉

    2017年05月23日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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