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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『幸福のパズル』 折原みとさん

    大人の恋でも譲れない

     漫画家と小説家の二足のわらじを履いて今年でちょうど30年。110万部のベストセラーになった『時の輝き』(講談社X文庫)を筆頭に、今の30~40歳代の女性が思春期に熱中したライトノベルを手がけた。年齢や経験を重ね、「本格的な大人向けの純愛小説を書いてみたくなった」と執筆の動機を明かす。

     新進気鋭の女性作家が、中学時代に憧れていた同級生と再会して恋に落ちる。2人が散策する海辺、高台に立つ瀟洒しょうしゃなホテルなど、潮の香りをも伝える情景描写が物語を盛り上げる。舞台は自宅のある神奈川・湘南エリアに設定した。「ジェットコースターみたいなストーリーにしたかった。突拍子もないことが次々に起こる中で、真実味を出すには自分の生活圏内で書くのが一番だと思った」

     引っ込み思案な主人公は運命に翻弄され、何度も恋人と引き裂かれる。「昼ドラ」のようにエピソードが盛りだくさんで、完成には3年を要した。漫画の連載と並行してライトノベルを1、2か月で仕上げていた著者にとっては、これほど時間をかけて取り組んだのは初めてだった。

     「3か月で1行も書かない時期があったり、プロットを大幅に修正したり。悩む度に、成長するための修業だと自分に言い聞かせました」

     本編は自己最長の585ページに達し、「文字数にしたら以前の小説の4冊分になるかも」と笑う。短い文章で畳みかける文体を捨て、人物の心のひだを丁寧に描いた。節目を飾る意欲作は、間違いなく大きな転機となった。

     劇的な変化があったが、譲れないこともある。ハッピーエンドにすることだ。「少女漫画のセオリーとして、最初に好きになった男の子と結ばれないと読者はきっと納得しない」。恋愛物語の名手の面目躍如だ。(講談社、1850円)淵上えり子

    2017年05月30日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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