文字サイズ
    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』 とに~さん

    アート案内、ツッコミも

     「もし絵の前にさい銭箱が置いてあったら、お金を入れたくなりますね」。東京・新宿の東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で、ゴッホの「ひまわり」をじっと見つめてつぶやいた。深みのある色彩、力強い筆致は神々しいということらしい。

     元々は吉本興業所属のお笑い芸人で、2008年からは世界でただ一人の「アートテラー」を名乗っている。ストーリーテラーをもじった造語で、講演会や雑誌のコラムなどでアートの魅力を伝える職業だという。美術を専門的に学んだことはないが、年間300を超える展覧会に足を運び、学芸員に取材する。

     「アートにはとっつきにくいイメージがある。親しみやすくするため、作品にツッコミを入れながら紹介しています。研究者とは異なる視点で自由に語り、面白さを伝えられるのが強みだと思う」

     初の著書は、西洋の名画を集めた架空の美術館を案内する形式で美術史を概説。ルネサンス、バロック、ロココ……と学術的な分類にのっとっているものの、よくある入門書とはひと味違う。

     例えば、ゴッホの逸話として、いとこにプロポーズを断られた後に「ろうそくの火に手をかざし、熱さに耐えた秒数だけ会わせてほしい」と懇願したことを紹介。すかさず〈熱湯コマーシャルかよ!〉とツッコんでいる。他にも、フランスの官展「サロン」のことを〈芸人の世界でいうところのM―1グランプリ〉と解説するなど、絶妙な表現がちりばめられている。

     「アートを見て感じたことを言語化せずにはいられない。ブログも書いていますが、本は集大成です」。くすっと笑えて知的好奇心をかき立てられる一冊。お気に召せば、著者と一緒に美術館をめぐる「アートツアー」に参加するのも手だ。(誠文堂新光社、1500円)

    淵上えり子

    2017年06月20日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    大手町モールのおすすめ
    帆布鞄
    リンク