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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『ある日うっかりPTA』 杉江松恋さん

    大過なくて良かった

     少し怖そうな見た目のミステリー評論などを手掛ける著者が、子どもの学童クラブの活動にかかわるうち、小学校のPTA会長を頼まれることになった。「僕の場合は変革より、大過なくプラスマイナス・ゼロで終われて良かった」と、感謝状を片手に語る。

     役に立つかもしれないと、3年間の体験をユーモアを交えて記した。就任1年目の4月から、小学校のほか学区の中学校、幼稚園の入学式に3日続けて出席。教員の歓送迎会などの準備にも追われ、「これが続くのか」と戸惑った。

     学校のPTA会室を入りやすい雰囲気にしたり、保護者の当番で行っていた校庭開放の管理を、負担を軽くするためシルバー人材センターに任せたりもした。

     「子供のことは親でするといった『理想論』は、始める前はいいけれど、実際にやり出すと難しい」。連絡手段にメーリング・リストを利用したのに登録に苦労する親が出たり、感情的に役員たちが行き違ったりすることもあった。「情報共有は大切です」

     「保護者や地域の活動は、熱心な親の子が卒業すると途切れることがある。PTAはそれを一人当たりの負担をできるだけ少なくして、組織だってできます」。いかつい見た目も、行事の際は子どもの目印として役立ったという。

     1968年生まれ、本名非公表。子どもの頃は『八つ墓村』をはじめ横溝正史原作の映画の全盛期で、ミステリー好きになった。大学卒業後、電機会社で採用担当や営業を経験し、30代でフリー。書評や評論など幅広く活躍する。

     「書評の執筆で大切にしているのは、情報量。自分語りより、素材の情報です。今回の本も、PTA会長としての体験や思ったことを対象化し、情報として書きました」

     共感を誘う語り口は、プロ意識の賜物たまものだ。(KADOKAWA、1300円)

     待田晋哉

    2017年07月04日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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