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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『定年後』 楠木新さん

    人生は後半戦が勝負

     生命保険会社で36年の勤めを終え、あえて再就職などはせず、定年退職者の生活を実体験した。同窓会で話を聞いたり、図書館で観察したりといった準備を重ね、第二の人生の生き方を考えた。

     記されているのは、厳しい現実。定年後、生き生きとしている人は半数に遠く満たないだろうという。口では「定年後も忙しくて大変」と言っていても、表情に充実感がなく、「会社員時代は良かった」。特に男性は、ひとりぼっちの姿がやけに目についたと振り返る。クレーマーになったり、生活リズムが乱れたり……。大企業や伝統ある会社で組織にどっぷり漬かっていた人ほど落差が大きく、対応できない人が多いという。

     企業では50歳代の社員に、配偶者との良好な関係形成や健康管理などを教えるセミナーを行うことが多い。だが、「それだけでは幸せにならないのが実感だ」と指摘。社会とのつながりや居場所作りこそ、充実した毎日の決め手になると強調する。そして定年後に急に見つけるのは困難だから、助走期間が必要だ、とも。「定年後は60歳からではなく、40歳代後半ないしは50歳から始まっているのです」

     自身は47歳の時、会社員生活に行き詰まり、体調を崩して長期休職。自らを見つめ直し、50歳から、やりたかった執筆活動と会社員を両立させると決めた。「左遷や病気などに遭った人の方が、客観的に見つめ直せる」と語る。

     定年後、自由な時間は8万時間もあるという。まさに「人生は後半戦が勝負」。なのに、何も見つからない人はどうすれば? 人生を楽しむ63歳に助言をもらった。

     「生き生きしている人たちは、小さい頃に好きだったことと今の活動を結びつけていることが多い。本当の宝物は、学生時代や入社後よりも、もっと前に隠れている」(中公新書、780円)

    小林佑基

    2017年07月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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