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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『キッズファイヤー・ドットコム』 海猫沢めろんさん

    愛がなくても子は育つ

    • 海猫沢めろんさん
      海猫沢めろんさん

     東日本大震災の2か月後、長男が生まれた。ある事情から一時期、一人での子育ても経験した。「泣きやまないときは、超イラッときた」という。「家で一緒にいると頭がおかしくなりそうで、抱っこひもで子供を抱き、外に出ていました」。渾身こんしんの新刊小説は、その育児への思いが詰まる。

     挫折知らずの男、白鳥神威は、新宿・歌舞伎町で27歳にしてホストクラブの店長にのし上がった。ある夜、帰宅すると、ドアの前に乳児の乗ったベビーカーを見つけた。覚悟を固めた彼はインターネット上で多くの人からお金を集める「クラウドファンディング」で育児資金を集める――。

     「子供を大切に、クリーンに育てようといった風潮が嫌いです。ならば、歌舞伎町で育ててしまおうと」

     <愛情なんてわけわかんないもんに囚われてるから、愛せないとか妙な悩みにハマるんだよ>

     一見、奇抜な話なのに、随所に心に残る言葉がある。「僕の周りには愛をかけられずに育った人もいた。愛を強調するより、愛がなくても人は育つと言う方が楽になれる」

     1975年、大阪府生まれ。兵庫県育ち。中学時代は、ゲームと美少女アニメが好きな「ばかでオタク」だった。親が心配して全寮制の高校に入り、そこには漫画などが一冊もなく、本を読み始めたという。卒業後はホストやデザイナーなどを経て作家となり、『ニコニコ時給800円』をはじめ個性的な作品を書く。

     「親になれば、『あいさつしよう』とか常識的なことを息子に言うしかない。常識的なことが嫌いで作家になったのに葛藤がある。でも、その自分も『自分のことばかり考えて』と嫌になる。その無限ループから生まれるものがあると思う」。子供をなだめるときに読む絵本を手に、快活に語った。(講談社、1300円)

    待田晋哉

    2017年08月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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