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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『ルールズ』 新藤晴一さん

    窮屈な世の中から飛び出せ

     手に持つ小さな葉巻は、原稿に向かう際のスイッチだ。執筆場所は、落ち着いた雰囲気のコーヒーチェーン店。「黒糖ミルク珈琲コーヒー」を注文することまで決まっている。人気バンド、ポルノグラフィティのギタリストが、作家へと意識を切り替える流儀。「形から入ることが好きなんですよ」と笑うが、作品における絵が浮かぶような詳細な場面描写にも通じている。

     今春までの約1年間、ウェブサイト「ヨミウリオンライン」の「ポップスタイルブログ」で連載した青春バンド小説に加筆し、完結させた。小説は2010年に続き、2冊目。作詞家としての評価も高い。「幼い頃から本を読むのも作文を書くのも好き。音楽を志す前に小説家や新聞記者にぼんやり憧れていた」

     物語の設定は、中国の“超絶技巧ギタリスト養成村”出身の少年が登場するなど架空の要素もあるが、彼をバンドに引き入れデビューを目指す主人公の紆余うよ曲折は、現実を色濃く反映している。バンド内の意見の食い違いは日常茶飯事。「バンドに限ったことではないだろうけど、みんなが同じ方向を向くことは本当に難しい。でも、同じ方向を向く瞬間はある。その時は強い」。ストーリーも一気に、テンポを上げる。

     書籍化にあたって変更したタイトルには、読み手への強いメッセージを込めた。「学生時代、世の中のルールからはみだした生き様を見せるロックバンドが輝いて見えた。今はSNSを通じて、みんなが互いにがんじがらめにし合っている。窮屈な中を飛び出して、むちゃくちゃなことをやるミュージシャンが出てこないかな」

     平凡で悩み多き主人公が殻を破り、“ロックのルール”で行動を起こす時もやがて訪れる。物語が最大のボリュームとなる見せ場だ。(マガジンハウス、1500円)

    清川仁

    2017年09月12日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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