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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『100億人のヨリコさん』 似鳥鶏さん

    大学寮のSF的幽霊 ( たん )

    • 似鳥鶏さん
      似鳥鶏さん

     数年前まで謎めいた家族や多国籍の人が住む千葉の安い木造アパートに住んでいた。「駆け出しの小説家はこんな『トキワ荘』風のところで頑張るのがいいと兄に言われた」と笑う。その生活が原点にある、大学の学生寮が舞台の笑えて怖いサスペンス小説だ。

     元々、京大の吉田寮などバンカラ風の学生寮にあこがれがあった。「ワイワイガヤガヤして変なものがいっぱいある感じが楽しそう」。高校の文化系サークルが舞台の10年前のデビュー作のように、当初は寮の貧乏学生たちが事件を解決するミステリーにするつもり。が、「10年たって同じことの繰り返しではダメだと、独自性を探していたら、何かが降りてくるような経験を初めてした」。

     降りてきたのは、以前のアパートのボロさの比喩として自作のエッセー風あとがきで書いていた、天井に貼りつく女の幽霊「ヨリコさん」と、幽霊をSF的に解き明かす野心的発想。謎めいたオンボロ寮に住み始めた主人公が、幽霊の巻き起こす世界的騒動に遭遇する奇想天外な物語にスケールアップした。

     千葉大を経て北大法科大学院時代の2006年、新人賞に佳作入選し作家に。動物園ミステリーや武井咲さんら主演でドラマ化された『戦力外捜査官』で人気を広げている。

     魅力となっているユーモア感覚と人物造形のユニークさは本作でも爆発。パンツでよく育つキノコだの、大学内で自給自足する寮の先輩だの、各所で笑える。36歳。188センチの長身でペンネームは「大学時代、鶏に似てると一部でジャンボチキン野郎と呼ばれていたから」とか。

     この人を食った冗談気質、天性のものらしい。写真撮影中にも「あそこに誰かヨリコさんとして貼りついたら」と周囲を巻き込みワイワイガヤガヤ、にぎやかだった。(光文社、1500円)

    佐藤憲一

    2017年09月19日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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