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    話題作の著者へのインタビューで、創作の意図、素顔に迫ります。

    『愛のかたち』 岸惠子さん

    大人の恋、複雑な道行き

    • 岸惠子さん
      岸惠子さん

     「愛? ええ、信じていますよ」。取材の途中、ベテラン女優で作家の著者は、さらりと言った。「けれど愛が結ばれて、同じ形や質で長く続くとは、どうしても思えません。形は変わってゆくものではないでしょうか」

     成熟した大人の生を描く4年前の『わりなき恋』に続く新作は、様々な男女の愛の形を描く2編を収めた。表題作は、自身も結婚や離婚を経て40年余り住んだパリなどが舞台。化粧品会社に勤める女と、ブキャナンと名乗る複雑な過去を抱えた男の恋の道行きを刻む。

     二人の距離を縮める飛行機のトラブル、凍えきった学校の寄宿舎の情景。細かな描写が、小説を盛り上げる。「好奇心のまま世界を気ままに歩いてきたから。物語は創作ですけど、ディテールは見聞きしたことを生かしました」

     <君を愛しているんだ。ただ今は、この愛に埋没したくはない>

     恋愛をめぐって、胸をつかまれる1行もある。

     「メールやLINEラインなどが便利になり、今の人間は生身で触れ合わず弱くなっているのではないでしょうか。強い人を書きたかった」

     1932年生まれ。今著では12歳の記憶が鍵を握る。自身も「12歳のとき子供をやめた」と振り返る。横浜大空襲に遭い、「大人に防空ごうへ入れと言われ、ここにいると死ぬと思い、逃げ出して助かった」という。

     映画デビューする前は、文学少女だった。近年の芥川賞受賞作では、田中慎弥『共喰い』、村田沙耶香『コンビニ人間』などが面白かった。「『コンビニ人間』は、実際に働いたから書けたと思う。ちっこいものを上手に書くより、大きなものが好き」と語る。

     「1本やりたい映画があるのだけど」。帰り際、吸い込まれるようなで言われた。(文芸春秋、1500円)

     待田晋哉

    2017年12月26日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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